グローバル資本が“新冷戦”で日本回帰 2年後までに日経平均5万円も エミン・ユルマズ
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戦後の冷戦期、日本は高度成長の恩恵を受けた。「新冷戦」が始まった今、グローバルマネーは中露を避け日本株に舞い戻っている。
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世界は2013〜14年を境に「新冷戦」に突入した。13年にはロシアが支援するシリア・アサド政権が化学兵器を使ったとみられる攻撃で多数が死傷し、米国はシリアに軍事介入を検討した。中国の習近平政権が本格的に始動したのも同じ年だ。習政権はその後、鄧小平路線から決別し、米国との対立を深めている。さらに14年にはロシアがウクライナのクリミア半島を併合した。新たな東西対立の構図が出現しているのは明らかだ。
その変化は日本経済、ひいては日本株に大きな影響をすでに及ぼし、これから一層顕著になる。深掘りする前に第二次世界大戦後の歴史を振り返ってみよう。
前回の冷戦は米ソの対立が激化した1947年ごろに始まった。50年には朝鮮戦争が勃発し、米軍は日本で大量の物資を発注。いわゆる朝鮮特需だ。米国はわずか5年前まで敵国だった日本やドイツに報復するより、ソ連と対峙(たいじ)する国として支援し、それが両国の高度経済成長につながった。
しかし、ソ連は80年代になると弱体化し、米国にとって日本やドイツの必要性が薄れてきた。米国は日独に対する為替面の優遇をやめ、半導体市場を圧倒していた日本企業に圧力を強めた。
冷戦が決定的に終わったのは89年11月9日、ドイツの東西ベルリンを分断する壁が崩壊した時だ。日経平均株価がその50日後、ピークを付け、33年以上回復できていないのは偶然ではない。
日本がバブル経済の崩壊による不況と低成長にあえぐ中、グローバル資本は敵ではなくなった旧ソ連圏や中国に押し寄せた。その動きを織り込んだグローバル資本が日本から資金を引き揚げ始めた。例えば、外国の機関投資家は日本株の運用担当者を減らし、香港やシンガポールに駐在する専門家を増やした。外国人投資家が日本株に興味を失ったことが日本株急落の一因だ。
マネーは日独に向かう
それから約24年後の13〜14年ごろ、ポスト冷戦時代は終わり、世界は地政学的な転換期を迎えた。グローバル資本は今、22年のウクライナ戦争を契機にロシアから撤退せざるを得なくなり、中国でも同じことが起きるかもしれないと恐れている。
今年6月、米ベンチャーキャピタル大手のセコイア・キャピタルが中国事業を分割すると発表した際、米中対立が要因という見方が広がった。おそらくセコイア以外に50社ぐらい同じような考えに立つ投資家がいるだろう。つまり、欧米の投資家は中露に投資しにくくなっており、彼らがマネーを振り向ける国々の筆頭にあるのは日本とドイツだろう。
先進国の主要株価指数の動きを見れば、そう読み取れる。年初来の上昇率1位は7月13日現在、AI(人工知能)バブルによってはね上がった米ナスダック株価指数(32%)、2位は日経平均株価(24%)、3位は独DAX(15%)と分かりやすい。一方、香港のハンセン指数はマイナス2.1%に落ち込んでいる。
新興国では、インドのセンセックス指数が6月に入って過去最高値を更新した。モディ印首相が訪米したタイミングと重なる。モディ首相は訪米中、アップル、アマゾン・ドット・コム、グーグル、マイクロソフトなど米IT(情報技術)大手の首脳と会った。「インドを中国に代わる国にした…
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週刊エコノミスト
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