投資・運用

加速する株式分割 新NISAにらみ個人投資家向けに 和島英樹

株式を25分割したNTT Bloomberg
株式を25分割したNTT Bloomberg

 新NISAの投資対象となることや、若年層の株主を増やすことを目的に株式分割の動きが加速している。

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 東京証券取引所の要請や2024年1月から始まる新NISA(少額投資非課税制度)を前に、株価が高い「値がさ株企業」に株式分割の動きが継続している。今年9月末割り当てでは、株価が1万円以上の企業のうち半導体テスターのアドバンテスト(1対4)、半導体洗浄装置のSCREENホールディングス(1対2)、電子部品の村田製作所(1対3)、パワーデバイスのローム(1対4)などが株式分割を実施することを既に発表している(表1)。

 東証は個人が投資しやすい環境を整備していくために、望ましい投資単位の水準を「5万円以上、50万円未満」と定めている。50万円以上の上場企業については投資単位の引き下げを検討するよう、要請を行ってきた経緯がある。従う企業は少なかったが、22年10月に開催された金融審議会「市場制度ワーキンググループ」で最低投資単位引き下げを強く促したことで、23年3月期末に株式分割を行う企業が増加した。

新規の株主作り

 一方、24年1月から開始される新NISAでは、個人投資家による個別株への投資枠が広がる。NISA枠で投資するのは比較的長期保有を目的とした投資家が多いとされ、こうした投資家の投資対象にするために、企業サイドが株式分割に踏み切るケースも多い。

 半導体のシリコンウエハーや塩ビ樹脂で世界首位の信越化学工業は3月末に1対5の株式分割を実施した。当時の発表資料では「新NISA制度が発足することも踏まえ、株式分割によって個人投資家の皆さまに投資していただきやすい環境を整え、投資家層の拡大を図ることが目的」と明記している。23年3月期末ではロボットのファナック、半導体製造装置大手の東京エレクトロン、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドなどが大幅分割を行っている。(表2)。

 信越化学や東京エレクトロン同様に法人間取引(BtoB)の多いロームや村田製作所などは、個人には業務内容を知ってもらう機会が少ない。9月末基準の分割で最低投資金額を下げることで、投資対象として企業への理解を深めてもらう狙いもありそうだ。

 ここに来てさらに市場関係者を驚かせたのはNTT(日本電信電話)の株式25分割だ。NTTは今年6月末割り当てで1対25の株式分割を実施した。株式分割直前の株価が最低単位の100株で必要な購入金額が44万円台だったのが、分割後には1万7000円台で買える株になった。東証が求める投資金額50万円以下の企業の大幅分割はサプライズとなった。

 島田明社長は6月の株主総会で「より幅広い株主が投資しやすい環境を整備する」などと語った。NTTの株主は22年3月末時点で約69万人。報道によれば個人投資家の8割が60歳代という。投資単位を引き下げることで、若年投資家層の拡大を狙った側面が強い。

 今回の株式分割は、新規の株主作りという側面だけではなく、顧客獲得の手段としても攻めの動きを示した。NTTは傘下に携帯電話のNTTドコモを擁している。…

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週刊エコノミスト

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