PBR1倍が株価の下値になる有望銘柄はこれだ 山本伸
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住友商事は今後、株主資本に対して一定の比率で配当を出す方針に転じた。非常にリスクが低い投資先といえるだろう。
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「株価純資産倍率(PBR)1倍」が株価の下値となる企業が今後、続出するだろう。東証の要請を受け、PBRの向上目標を明記した中期経営計画を策定する企業が相次ぐ。実現するには株価水準を引き上げる必要があり、そのためには株主還元方針の強化が急務だ。
代表例は住友商事だ。同社のPBRは3月まで0.7倍台だったが、6月中旬に一時1倍に達した。株価が上昇した一因はもちろん、米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が4月に来日し、日本株を追加購入する意向を示したことだ。同氏は2020年、住商株を購入したことを明らかにしていた。
しかし、それとは別の背景もある。同社が23年3月期以降の株主還元方針を「株主資本配当率(DOE)3.5〜4.5%の範囲内で、連結配当性向30%を目安とする」と決めたことだ。DOEとは株主資本の何%を配当に回すかを示すもので、これを公約した場合は赤字に転落しても公約通りの配当を支払う必要がある。変動が大きい当期純利益を原資とする配当性向とは異なり、DOEを基準とすれば安定的に配当を出せるというわけだ。
つまり、現状のPBR1倍近辺で買えば、よほど経営が悪化しない限り、年4%前後の安定配当を期待できるわけで、リスクが非常に低い投資先といえるだろう。
含み益大きいTBS
次に挙げたいのはPBRが0.5倍台と低いTBSホールディングス(HD)だ。民放各社の放送事業は総じて低迷している上、過去にソフトバンクや楽天などが敵対的買収を試みてことごとく失敗した。さらに議決権付き株式のうち外国人保有分の上限を20%とする法規制がある。外国人投資家が投資対象に選びにくいことからPBRが低いのだ。
しかも民放の多くは、発行済み株式のうち特定株式(株式市場で流通しない大株主の株式)の比率が高い。このため民放の中には、自社の株価を高めようとして自社株買いをすると、特定株式の比率が65%を突破してしまう企業がある。東証プライム市場に上場を維持するために必要な基準「流通株式比率35%以上」を満たせなくなってしまう。つまり、特定株式の比率を下げない限り、自社株買いが難しいというわけだ。
その点、TBSHDは例外的に株主還元を強める余地が大きいと考えられる。特定株式比率が低い上、23年3月期有価証券報告書の記載数値を基に計算すると、「賃貸等不動産」の含み益が2358億円となり、同社の時価総額の半分に上る。東京・赤坂に保有するオフィスビルなどのことだ。さらにかつて完全子会社だった半導体製造装置大手の東京エレクトロン株を543万株保有し、7月上旬現在の時価評価額は1000億円を超す。含み益が大きく、増配や自社株買いをしやすい。
豊田自動織機も含み…
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週刊エコノミスト
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