クレディセゾン社長とセゾン投信社長が語る会長退任の経緯
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中野晴啓氏がセゾン投信を去ることになった経緯について、親会社クレディセゾン社長COO(最高執行責任者)の水野克己氏とセゾン投信社長CEO(最高経営責任者)兼COOの園部鷹博氏に聞いた。(聞き手=谷道健太/浜條元保/村田晋一郎・編集部)
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── セゾン投信会長CEOだった中野(晴啓)氏の退任の経緯を確認したい。中野氏は4月5日に親会社のクレディセゾン会長CEOの林野(宏)氏から直接辞めるように言われたと主張している。
水野 中野氏と林野のやり取り自体はわれわれの関与するところではなく、その内容は知らない。ただ、半年ぐらい前にセゾン投信を今後どうしていくかという経営戦略を話していた。もともとセゾン投信の設立趣旨の一つに「セゾンカード会員の資産形成に資する」ことがうたわれており、大きなミッションになっていたが、手を付けられていない状況だった。
「経営刷新にあたり中野氏に退任してもらった」水野
当グループが金融コングロマリットのような形で、各社の事業を進めていく中で、セゾンカード会員向けに投信の積み立てを販売していくことは重要な戦略だと思っていた。中野氏を否定するわけではないが、われわれのやり方を変えないと、SBI証券や楽天証券の規模には勝てない。ある程度の規模を保てないと、今後の経営が難しいと、グループ会社のビジネスモデルを刷新し、それを担える経営体制に変えていっている。旧態依然のやり方を引きずる体制を残しておくと、グループ全体がうまく機能しないのではないかとの懸念があり、中野氏には退任していただくという結論に至った。
「直販」vs.「拡大」ではない
── カード会員向けの積み立て投資サービスは既に始めている。
水野 Finatext社と提携して、スマートフォン証券サービス「セゾンポケット」を2019年から始めている。しかし、セゾン投信側のシステムが整っていないのが実情だ。例えば、インターネットで受け付けても口座を開くには紙の書類を郵送する形になり、お客様に大きなストレスをかけている。一方で、SBIなどはスマホ上で完結できている。そこを改善しないと進まない。そのため来年1月には新システムをスタートさせる。
── 中野氏はその状況を理解していたのか。
水野 理解はしていたが、優先順位が低かったのだと思う。
園部 今回、クレディセゾンとセゾン投信は金融仲介業の契約を結んだが、セゾンカードのお客様が口座を開設してくださることは、セゾン投信の直接販売のチャンネルになる。だが、中野氏はセゾンカード会員への案内はあまり積極的ではなく、むしろやりたくないと言っていた。
── 報道では、中野・直販路線とクレディセゾンの林野会長CEO・拡大路線の対立とされている。
園部 その対立構図は事実ではない。セゾン投信は既に18社の金融機関に商品を提供しているので、直販にこだわったわけではない。むしろ販路拡大にこだわったのは、中野氏かもしれない。19年に楽天証券に商品を提供したいという話をしたのは中野氏だった。
「中野氏はセミナー開催のやり方に固執した」園部
中野氏は直販にこだわったというより、自分がいろいろなところへ行ってセミナーを開催し、それによってお客様に来てもらう、その広げ方、やり方に固執したという感じだ。それはそれで素晴らしい活動だと思う。しかし同時にそれ以外のやり方をもっと模索していくべきだったが、自分のセミナーにこだわった。これが報道では「直販にこだわった」という書き方をされている。セゾン投信もクレディセゾンも直販を否定する、やめることは考えていない。むし…
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週刊エコノミスト
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