経済・企業

“赤ちゃん物価指数”を作ってみた――一般物価の2倍超も高騰 遠藤裕基

物価高は、ベビー用品にも
物価高は、ベビー用品にも

 子育て中の現役エコノミストが、日常生活から感じ取った疑問に自ら取り組み、政府の「異次元の少子化対策」に提言する。

子育て経験きっかけで乳児グッズの値上がりを記録

 筆者は昨年2022年に長男が誕生し、乳児関連のグッズを買う機会が増えた。粉ミルクや紙おむつは毎日使う物なので、購入頻度が高く、買い物のたびに「あれ、少しずつ値段が上がっている?」と感じ、物価上昇による負担感を強く意識するようになった。

 ただ、さすがに買い物のたびに価格を記録しているわけではなかった。そこで改めて統計を使って、乳児関連のグッズが本当に値上がりしているのか、そして、負担感は本当に強まっているのかを確認しようと思い、独自に作成したのが「赤ちゃん物価指数」である。エコノミストとして、しっかりと数字で示して議論をしたい、という強い思いもあった。

「おもちゃ」をどうするか

 赤ちゃん物価指数は消費者物価指数(CPI)に含まれる品目のうち、粉ミルク、乳児服、紙おむつ(乳幼児用)、人形、玩具自動車を一定のウエートに基づき合成した指数である。作成にあたって一番悩んだのが、品目の選定である。CPIには582の品目があり、この中から赤ちゃんにとって必要なものをいかに抜き出すかが、指数が生きたものになるかどうかの大きな分かれ目となる。まず、そもそも赤ちゃんしか使わないものは、そのまま当該品目を採用するようにした。例えば、粉ミルクや紙おむつ、乳児服である。

 悩んだのが離乳食である。離乳食はパックに入ったものなどを買ってくるケースもあれば、家で調理するケースもある。CPIの調査品目に離乳食があれば、それを採用するつもりであったが、離乳食は残念ながらなかった。一方で、調理の場合、使用する食材を選んで指数に入れることになるが、大きく二つの問題があった。

 一つ目は、月齢によって使う食材が増えていくという点である。離乳食の基本である「10倍かゆ」から始まって、野菜、果物、魚と食べられるものが増えていくため、どの時点の食材を赤ちゃん物価に入れるかが非常に悩ましい。二つ目は、合成の際に使うウエートの問題である。CPIのウエートは、当該品目の支出金額が家計支出全体のうち、どの程度の割合になっているかを示すものである。このため、食材のウエートは大人の消費分も入ってしまうことになる。結果、食材のウエートが大きくなり、これを入れてしまうと、単純に食材だけで動く物価指数となってしまう。

 こうした問題に対処することが困難であったため、赤ちゃん物価では食材の採用を見送り、食材の価格上昇が反映できていないという問題点がある。

 もう一つ悩んだのが、おもちゃの扱いであった。おもちゃは、赤ちゃんにとって生活必需品とはいえないが、おもちゃで遊ぶことによって育まれる能力などを考えると、それなりに重要な品目ともいえる。また、ある程度の月齢になると、おもちゃを使って一人で遊ぶことも可能となり、その間、親は育児以外の家事や自分の食事ができるなど、親にとってありがたいものである。

 CPIの品目をみると、玩具には家庭用ゲーム機、ゲームソフト、人形、玩具自動車…

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週刊エコノミスト

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