経済・企業

生成AIが生む成長市場で注目の日米銘柄は? 今中能夫

生成Ai向けGPUで8割のシェア握るエヌビディアのジェンスン・フアンCEO Bloomberg
生成Ai向けGPUで8割のシェア握るエヌビディアのジェンスン・フアンCEO Bloomberg

 生成AIブームが到来し、半導体と製造装置は新たな成長サイクルに入ったようだ。

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 2022年11月30日に米国のAI研究機関「オープンAI」が公開した文書生成AI「チャットGPT」が、生成AIの大ブームを引き起こしている。もともとは社内文書やメールの作成、プログラムコードの作成ができるものだが、各種の質問に対する回答も行えるため、検索の代わりになる可能性もある。

 回答に間違いがあったり、著作権上の問題など今後解決しなければならない問題もあるが、大きな可能性を持っている。多くの企業で情報システムに生成AIを組み込む動きが出ている。この動きを主導しているのが、19年からオープンAIに資金提供し、密接な提携関係にあるマイクロソフトだ。

 マイクロソフトはチャットGPTの次世代版「GPT–4」を搭載した「コパイロット」という業務支援ソフトを開発し、現在ユーザー企業でテスト中だ。今後数年でオープンAIに数十億~100億ドルの資金を追加投入する。これに対し、GAFA(グーグル、アップル、メタ、アマゾン)や他の大手ITが追随して自社製生成AIを公開したり、開発計画を明らかにしている。文書生成AI以外の分野でも動きがある。画像編集ソフト最大手のアドビは23年3月に画像生成AI「アドビ・ファイヤフライ」のベータ版を公開し、これを使う広告クリエーターが増えている。この先には動画生成AIの需要もあろう。

潜在ユーザー10億人

 世界でパソコンを使って仕事をしている人は推定で10億人以上いると思われるが、この人たちが積極的に生成AIを使い始めたら企業は情報システムを大幅に拡大する必要がある。画像や動画生成AIを使うクリエーターが増えれば、さらに大きな負荷がかかるため、その対策も必要になろう。

 生成AIを自社システムに取り入れようという場合、多くの企業が選択するのが大手クラウドサービス(アマゾンのAWS、マイクロソフトのAzure、アルファベットのグーグルクラウドなど)だ。もともとAIシステムの構築に熱心で、生成AIは新しい有望事業となるが、彼らの巨大データセンターの中にはAI半導体(GPU、CPU、ASIC、HBM〈AI半導体とともに使う特殊メモリー〉)を装着したAIサーバーが並んでおり、これの増強が必要になろう。

 AIの機能は二つある。一つは、大量の学習素材を読み込む「ディープラーニング(深層学習)」。もう一つは、学んだことをもとに、命令者、質問者の命令、質問の回答を導き出す「推論」。10年以上前は、ディープラーニングも推論もCPU(中央演算処理プロセッサー)で行っていた。ところが12年ごろに発表された複数の学術論文によって、ディープラーニングには大量のCG画像を効率よく処理するGPU(画像処理プロセッサー)が適していることが発見された。ここから…

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