経済・企業

生成AI期待で高値の日本株 年後半に調整も 木野内栄治

 日経平均株価と半導体関連の在庫率は、コインの裏表の関係にある。

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 日経平均株価には3年程度のサイクルがある。株価は半導体や電子部品などの関連株のウエートが大きく、電子部品・デバイス工業の在庫循環がカギを握っている。ただし、過去の日経平均の戻り高値更新時に比べ、現在の電子部品・デバイス工業の在庫率指数の改善は限定的だ(図)。言い換えると、株価がやや先走り過ぎている。

 今回、在庫循環が改善していないにもかかわらず株高となった理由の一つは、AI(人工知能)への期待感が増したことが挙げられる。確かに生成系AIは大きなポテンシャルを持っている。

 台湾積体電路製造(TSMC)のCEOは「AI関連の需要は高い」(ロイター通信より。以下同)と話す。しかし「世界経済の回復が予想以上に遅れており、より広範な最終市場の低迷を相殺できていない」として、同社は業績見通しを下方修正した。AIに対する期待感が高まる一方で、株式市場はいつスピード調整に入ってもおかしくない。

 よって、年後半の日本株や電子部品デバイス工業の在庫改善には、上記のような「広範な最終市場」の回復が必要で、最も影響が大きいのはスマートフォンだろう。スマホの買い替えサイクルは3年程度とされ、アップル社のiPhoneを例にとれば、直近最もよく売れたのは2021年で、24年の売り上げは期待できそうだ。「3年サイクル」なら24年は在庫率が上昇する可能性がある。

下値は3万円

 ただ、21年のiPhoneの売り上げは極めて好調で、新製品はよほど魅力的なものでなければ挽回は難しいだろう。その意味では今秋のiPhoneの勢いは限定的になりそうだ。今年の年末商戦の停滞を受けて、テック全般の株価が下落した局面が「3年サイクル」の底になる、というのが筆者の見立てだ。年末なら、6、7月の高値で制度信用取引の絶対期日も到来する。日経平均の水準はPBR(株価純資産倍率)1.2倍前後で3万円程度だろう。

 生成系AIが早期に普及すれば年末を待たず、株価調整ももっと軽微な段階で3年サイクルが改善し得る。米国のメモリー大手マ…

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週刊エコノミスト

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