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国際・政治 米国のUFO論議

なぜ米下院は今夏UFO公聴会を開いたのか(編集部)

米国防総省のUFO調査部署(AARO=全領域異常解決室)トップが5月31日、米航空宇宙局(NASA)が開いた会議で示した資料。UAPは「未確認異常現象」。直径1~4メートルの球体が世界各地で記録されているとする(U.S. Department of Defense)
米国防総省のUFO調査部署(AARO=全領域異常解決室)トップが5月31日、米航空宇宙局(NASA)が開いた会議で示した資料。UAPは「未確認異常現象」。直径1~4メートルの球体が世界各地で記録されているとする(U.S. Department of Defense)

 米連邦下院は7月26日、未確認飛行物体(UFO)に関する公聴会を開き、世界中のメディアが大きく報じた。何が起きているのか。

>>特集「米国のUFO論議」はこちら

 公聴会の当日、米ニュース専門テレビ局CNNは「UFO内部告発者、『“非人類”の生物が見つかった』」という文字が躍るニュースを放送し、それから数日の間、日本の民放や大手紙も「UFO残骸 米が回収? 米軍の元調査担当、議会で証言」(7月28日付『毎日新聞』)などと報じた。世界中のテレビ局はさらに「UFOの映像」だとして、黒の背景にぼやけた白っぽい何かが映る映像を盛んに放送した。

 多くの報道機関が取り上げたのはたしかに7月26日の公聴会で元米軍士官3人が宣誓証言した内容の一部だったが、新事実はほとんどなかった。いずれも2017年から今年6月にかけて、米メディアが報じていた内容だった。それにもかかわらず、今まで積極的に報じてこなかった日本を含む世界中の大手メディアは大々的に取り上げた。米連邦議会で元米軍士官が宣誓証言した意義は大きいということなのだろう。

米政府の調査事業

 なぜ米連邦議会はUFOに関する公聴会を開いたのか。経緯を振り返ろう。

 米国でUFOに関する真面目な議論が広まったのは数十年ぶりのことだ。証言した元士官など関係者は、発端となった出来事は17年12月17日、米有力紙『ニューヨーク・タイムズ』が1面に載せた記事だったと口をそろえる。

 記事によれば、国防総省は07年、UFOの目撃報告を調査する事業を始め、総額2200万ドル(現行レートで約31億円)を費やした。当時の上院民主党トップだったハリー・リード院内総務が同事業の開始を主導したほか、上院国防小委員会のテッド・スティーブンズとダニエル・イノウエの両議員が後押ししたという。イノウエ氏はハワイ州生まれの日系2世で12年に亡くなった。日系人初の連邦議員として長く議席を維持したことで知られる。

 記事によれば、リード氏は09年までにウィリアム・リン国防次官(当時)に宛てた書簡で「取り扱いに高度な注意を必要とする非典型的な航空関連の目撃がいくつかあり、(UFO調査事業によって)その識別に多大な進展があった」と記したという。

 同紙の電子版には、国防総省のUFO調査事業担当部署が公開したとする映像が2点載った。米海軍戦闘機が「正体不明の物体」に接近した際に撮影したものだとキャプションにある。今年7月の公聴会後、世界中のテレビ局が放送した「UFO映像」はこれだ。5年半前に明らかになっていた映像を今なお使うのは、ほかにめぼしい映像がないからだろう。

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