国際・政治 米国のUFO論議
インタビュー「UFOに安全保障上の懸念」中林美恵子・早稲田大学教授
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未確認飛行物体(UFO)はオカルトの類いと考える人は多い。しかし、米国の政府や政治家は今、真剣に解明しようとしている。(聞き手/構成=谷道健太・編集部)
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正体が分からない飛行物体の目撃や、レーダーなどの機器による記録があってもそれを報告しない場合、安全保障上の問題になり得る。報告を妨げる問題があるなら掘り下げたい。米連邦下院がいわゆるUFOと呼ばれる現象に関する公聴会を開いた理由について、私はそう捉えている。
正体が分からない物体が飛行していたという疑いがあっても、裏付ける信頼性の高い証言や証拠がなければ、議会が公聴会を開くのは難しい。私は米連邦公務員の上院予算委員会補佐官として何度も公聴会に携わった。開催する際は、議員の意向はもちろん、行政府、業界団体、シンクタンクなどから開催の必要性に関する具体的な情報が得られていることが条件になる。
中国の気球も関係か
今、米国では政党、理念、文化の対立が激化しているが、今回は民主・共和両党の議員が「開催する理由がある」という認識を共有したと考えていい。両者を結びつけたのはおそらく安全保障上の懸念、そして「関連情報が適正に開示されているのか」という疑いがあったからだろう。行政府のチェックという立法府の役割を果たしたい議員の使命感が背景にあるのではないか。
ほかにも下院が公聴会を開いた理由をいくつか挙げられる。
1点目は大統領予備選の日程が近づいていることだ。その時期は政治家がこの種の話題を取り上げる傾向がある。2016年大統領選の民主党候補だったヒラリー・クリントン元国務長官も運動期間中、「調べる」とたびたび発言した。関心を持つ有権者がそれだけ多いということかもしれない。国防総省が昨年、専門部署(全領域異常解決室=AARO)を設けたのも、政治家や議会が関心を強めていることと明らかに関係がある。政治家…
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週刊エコノミスト
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