国際・政治 中国危機
米中対立 激しさ増す批判の応酬 背景に「和平演変」への懸念 小原凡司
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長引く米中対立。今年に入って、さらに激しさを増している。
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米中の非難の応酬が止まらない。2023年初頭、米中両国は対話路線にあるように見えた。しかし、1月下旬に中国の偵察気球が米国領空に侵入したため、米国務省がブリンケン国務長官訪中の延期を発表し、米国が同気球を撃墜したことによって、今度は、珍しく謝罪ともとれる「遺憾の意」を表明した中国が強硬姿勢に転じた。
3月7日、秦剛外交部長(当時)が、「米国のいう『競争』は(中略)ゼロサムゲーム(一方の利益がもう一方の損失となること)である」「米国のいう『ガードレール』は、事実上、中国に『殴られても殴り返さず、ののしられても口答えするな』と要求するものだ」と述べ、米国の「対立ではなく競争」という論理を否定し、バイデン大統領の呼びかけを切り捨てた。翌8日には、習近平国家主席が米国を名指し批判した。
権威主義国家の最高指導者による他国の名指し批判はまれである。最高指導者の発言は自らを含めて誰も覆せず、国家の方針となってしまうからだ。
6月18日にブリンケン氏が訪中したが、北京到着時、レッドカーペットはなく、高官の出迎えもなかった。また、習氏との会談は、2人が並ぶのではなく、「コ」の字型のテーブルに着席する異例の形で、向かい合って着席したブリンケン氏と王毅政治局員が、上座に着席した習氏の講話を拝聴しているかのような印象を与えた。
侮辱的ともいえる中国の態度は、米国が真剣に米中関係改善に取り組むことに懐疑的であるからだ。その米国は、中国にまだ圧力をかけても決定的に関係を悪化させない自信があるように振る舞っている。
ブリンケン氏の訪中直後の20日、バイデン氏が習氏を独裁者と位置付ける発言を行った。バイデン氏は、スピーチの中で、この発言の直前に「中国のことは心配しなくてよい」「中国は現実に経済的困難を抱えている」と述…
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週刊エコノミスト
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