こんな時どうする? インボイスQ&A 高山弥生
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さまざまな疑問が湧いてやまないインボイス制度。専門家がポイントをピックアップして解説する。
Q1 免税事業者も消費税を請求できる?
A 消費税法ではインボイス(適格請求書)の登録事業者以外が発行する請求書などに、消費税額や税率を記載することは禁止されていない。免税事業者が消費税額などを請求書に記載しても、罰則の対象とはならないのだ。ただし、インボイスではない請求書に消費税額が記載されていると、受け取った側が違和感を抱くことも少なくないだろう。
インボイスでない請求書に消費税額の記載が禁止されていないのは、インボイス登録事業者でない課税事業者(消費税課税対象の売上高が年間1000万円超の事業者)が存在する可能性があり、そうした課税事業者が請求書などに消費税額を記載することもありうるからと考えられる。インボイスでない請求書に消費税額が記載されていたとしても、請求書の発行事業者が免税事業者とは限らないのだ。
とはいえ、インボイスではない消費税額を記載した請求書を課税事業者である取引先が受け取った場合、取引先の納得は得られにくいだろう。取引先の課税事業者は消費税を申告する際、インボイスによらない消費税の支払いは仕入れ税額控除(受け取った消費税から支払った消費税を差し引くこと)ができず、消費税負担が増すからである。
そのため、インボイス登録事業者以外が請求書に消費税額を記載すると、取引先から値下げ交渉を誘発する可能性があるだろう。インボイス制度の開始後は、免税事業者が消費税額等を記載するケースは減少するのではないだろうか。一方、取引の相手方が消費者である場合、消費者はインボイスを受け取る必要性がない以上、請求する金額に消費税が含まれているかどうかは問題にならない可能性が高い。
Q2 請求書のない取引のインボイスは?
A 大手企業がフリーランスなどの小規模事業者に業務を外注している場合、小規模事業者からの請求書の発行を待たずに大手企業側が支払い通知書(仕入れ明細書、仕入れ計算書などともいう)を発行し、フリーランス側はこれをもって自身の売り上げを集計していることがある。一人親方と取引する建設会社やフリーランスのエンジニアと取引するシステム会社、ライターと取引する出版業界などだ。
小規模事業者がインボイス発行事業者として登録したとしても、取引の都度、請求書を発行するのは事務負担が重い。インボイスは必ずしも売り手側が作成しなければならないという決まりはなく、取引の相手方の内容確認を受け、インボイスの記載要件を満たしていれば、買い手側が発行する支払い通知書でもインボイスとして認められる。
そのため、インボイス制度開始後も支払い通知書をもってインボイスとする場合、支払い通知書を発行する側は取引の相手方である小規模事業者のインボイス登録番号を入手して支払い通知書に記載し、その他の記載要件も満たす必要がある。ただし、インボイス登録事業者であるならば、インボイスの発行を求められた場合、必ず交付しなければならない。
Q3 インボイス発行に税務署への開業届は必要?
A 個人で事業を始めたり廃業したりするに当たっては、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するが、これは所得税法上求められていることであり、消費税法においてインボイス発行事業者であるかどうかは関係ない。例えば、会社員の副業による収入は雑所得として申告することが多く、開業届の提出は必要ないが、課税売上高が1000万円を超えれば消費税の納税義務が発生する。
ただ、開業届は所得税の節税効果が高い青色申告をする際には提出が必要になる。青色申告をすると、所得税がかかる所得から最大65万円の特別控除が受けられる。複式簿記による記帳をして、所得税の確定申告書に貸借対照表と損益計算書を添付しなければならないが、インボイスの発行事業者登録によって消費税の納税負担が発生する個人事業主にとって、節税の手段は有効に活用することも検討したい。
Q4 支払った消費税のほうが多い場合は?
A 消費税は受け取った消費税から支払った消費税を差し引き(仕入れ税額控除)、その差額を納税する。この計算方法では、消費税額を計算する事業年度中に、多額の設備投資や修繕工事が発生したり、消費税が免税となる輸出取引をしたりしたことにより、受け取った消費税より支払った消費税が多くなることがある。その場合、消費税の確定申告をすることで還付を受けられる。
ただし、消費税の還付を受けられるのは、仕入れ税額控除による原則的な計算方法で消費税を納税する「一般課税」方式の事業者だ。また、インボイス発行事業者になった免税事業者を対象に消費税額を軽減する「2割特例」の適用を受ける場合も、申告時に一般課税方式を選択すれば還付を受けられるため、申告前にどちらが有利かを確認し…
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週刊エコノミスト
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