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住宅ローン金利 固定型は上昇し変動型は変わらず 関大介

マンション購入時、変動型か固定型か、思案のしどころ
マンション購入時、変動型か固定型か、思案のしどころ

 低金利が常態化していた日本に、金利上昇の波が押し寄せている。今から住宅ローンを組むなら……。

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ポイント・マイナス金利継続で、変動型は変わらない・日銀の金融政策変更がカギに・インフレで生活費上昇も考慮

 東京都心部では新築だけでなく中古マンションの販売価格が1億円を超え、その他の主要都市部でも上昇が続いている。建物の建築コストは、素材だけなくゼネコン(総合建設会社)の人手不足から上昇が続く可能性が高くなっているため、マンション価格の上昇は当面続くことになるだろう。

 さらに上昇を続けるマンション購入を支えてきた低金利も、米国に続き日本でも2023年になって上昇に転じている。この先も住宅ローンに影響を与える金利上昇は避けられず、時期と上昇幅が焦点となりそうだ。これは、13年から10年続いてきた日銀の異次元金融緩和政策が転換しているためだ。つまり、日銀の動向をどのように見るか、という点で今後の住宅ローン金利が左右されることになる。

返済総額500万円増

 日銀は22年12月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の変動幅を拡大させ、さらに23年7月にはYCC変動幅の上限を1.0%に引き上げた。この政策変更の背景には、債券市場の機能回復がある。

 これまでは、日銀が狭い範囲でYCCを運用し、金利が上昇すると国債買い入れを行い市場の金利決定機能が働いていなかった。長期金利の代表である10年国債利回りは、7月の政策変更後はそれまでの上限とされていた0.5%を超え、9月中旬以降は0.7%台で推移している。上限の1.0%まではまだ乖離(かいり)があるものの、市場機能は一定程度回復した格好になった。

 長期金利の上昇に伴い、固定金利での住宅ローン金利も上昇している。例えば代表的な35年固定型の住宅ローン金利(ダイヤモンド不動産研究所公表のDH住宅ローン指数)は、日米が金融緩和を続けていた21年12月には1.376%であったが、23年9月には1.864%になり、約0.5ポイント上昇している。毎月の返済額で見れば、代表的な借入期間である35年で5000万円の場合、21年12月時点の借り入れの場合15万円だったが、23年9月では16.2万円に増える。毎月返済額の増加は1.2万円であるが、返済期間は420カ月となるため返済総額では500万円超の増加となる。

 一方で変動金利型の住宅ローンは、金利が上昇していない。日銀はYCCで長期金利の変動幅を拡大させているが、変動金利型に影響を与える短期金利は変えていないためだ。日銀は16年1月に決めたマイナス金利政策(マイナス0.1%)を継続している(9月15日時点)。

 変動型の住宅ローン金利は、固定金利と同様の期間で比較すると、0.582%から0.508%とむしろ低下している。短期金利は例えば、6カ月TIBOR(東京市場の銀行間金利、既存貸し出し分の変動金利型住宅ローンは6カ月ごとに適用金利の見直しがあるため、6カ月TIBORを参考)で見ると、22年12月から23年9月まで0.150%程度でほとんど変化していない。しかし、ソニー銀行などのネット銀行が住宅ローン貸し出しの強化をしており、貸出金利競争が起きていることから、変動型金利住宅ローンの金利が低下している。

 今後マンションを購入し住宅ローンを組む場合、…

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