資源・エネルギー 脱炭素
GXの鍵握る中小規模施設のCCUS 佐藤智彦
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二酸化炭素(CO₂)を回収・輸送し、利用や貯留を行うCCUSの技術開発が進められている。注目されつつあるのは、多様なCO₂排出源からの分離回収を実現する中小規模排出源に適した回収装置の開発だ。
産業用ボイラーなどからCO₂回収
2050年に二酸化炭素(CO₂)排出実質ゼロ(カーボンニュートラル、CN)実現を目指している日本。脱炭素社会の実現を目指す「GX(グリーントランスフォーメーション)」を進めようと、今年5月に成立した「GX推進法」では、今後10年間で150兆円を超える官民のGX投資を実施するとしている。
このGX関連技術として着目されているのが、CO₂を回収・輸送し、利用や貯留を行うCCUSだ。発生したCO₂を大気放出前で処理することができるため、電化や燃料転換によるCO₂排出削減が困難な領域において実用化が期待されている。なお、CCS(回収・輸送・貯留)との違いは、必要に応じてCO₂を利用することを含む点である。
CCUSの導入は、CO₂削減が急務、かつ高効率な分離回収が可能な発電所や製鉄所のような1日当たりの排出量が数千トンから数万トン程度の大規模CO₂排出源から進むと目されるが、50年にCNを実現するためには、1日当たりの排出量が数トンから100トン程度の中小規模CO₂排出源においても導入する必要がある。
中小規模の排出源はさまざまあるが、産業で熱供給などに広く用いられるボイラー約2万基の97%や、地方公共団体が運営するごみ焼却施設1000カ所の90%、そして病院・下水処理場・大型複合施設などの自家発電設備も中小規模排出源となっている。これら中小規模排出源に適した回収装置には潜在的なニーズがある。
実際に中小規模プラント向けのCO₂分離回収装置の開発も進められている。CO₂吸収液の化学反応を利用してCO₂を分離する「化学吸収法」を得意とする三菱重工業は、商用初の…
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週刊エコノミスト
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