経済・企業 中国

曲がり角の中国スタートアップ 鈍化した起業の勢い 趙瑋琳

閉鎖された広東省深圳市のインキュベーターオフィス(2023年3月29日)
閉鎖された広東省深圳市のインキュベーターオフィス(2023年3月29日)

 中国経済の減速などを受け、新規株式公開やベンチャーキャピタルが逆風に直面している。

ハードテック、対消費者で再起の芽

 中国の起業やIPO(新規株式公開)市場が大きな転機に直面している。中国ではこれまで多数のユニコーン企業(評価額が10億ドル以上で、設立10年以内の未上場ベンチャー企業)が生まれ、経済成長の一翼を担ってきた。ここ数年でそうした勢いが明確に鈍化の傾向を示す一方、起業やIPOを巡る新たな変化の胎動もみられる。

 中国清科研究センターのデータによれば、ベンチャー投資金額や件数は2017年以降、投資ブームの熱が冷めたことで減少傾向をたどっていた。新型コロナウイルス禍の中で、半導体や新エネ関連、バイオテクノロジーなど向けの投資が盛り上がり、21年は投資金額、件数ともに上昇に転じたものの、22年は投資金額が前年比33%減の2487億元(約5兆1800億円)、件数は13%減の4515件と再び減少した(図)。

 IPO件数や資金調達額も曲がり角に差し掛かっている。中国国内の報道によると、21年は北京証券取引所の開業や米国からの中国企業の回帰上場の流れを受け、IPO件数は524件と過去最高に達した。また、資金調達額も22年、5869億元と過去最高を記録したが、今年1~8月のIPO件数は243件と前年同期比4.3%減、資金調達額は3055億元と38.5%も減少した。

 こうした動きの背景には、中国経済の減速やプラットフォームビジネス、教育関連ビジネスに対する当局の規制強化、就職難による若者の安定志向の高まりなどが挙げられる。また、IPOを巡っては中国当局が今年8月下旬、投資家の信認を高めることを理由に「段階的に抑制する」と発表しており、今後は審査の厳格化によって当面はIPOの低調が続くと予想する市場関係者が多いようだ。

 ユニコーン企業数も伸び悩んでいる。米調査会社CBインサイツのデータを基に、21年6月~23年5月の米中のユニコーン企業数の変化をみると、米ユニコーン企業の数は78%の増加であったが、中国企業は25%の増加にとどまっている。世界全体のユニコーン企業数に占める中国企業の割合も24%から15%に低下し、起業の勢いの鈍化が一目瞭然となっている。

注目研究者の企業上場

 ただ、IPOではすべての分野で低調だったわけではない。米中貿易摩擦が勃発した18年以降、中国ではAI(人工知能)やロボット、スマート製造、半導体などが含まれる「硬科技」(ハード&コアテクノロジー、以下ハードテック)関連分野は好調だった。その象徴的な事例が、今年5月に上海証券取引所のハイテク企業向け市場「科創板」(スター・マーケット)に上場した紹興中芯集成電路製造だ。

 紹興中芯集成は中国のファウンドリー(半導体受託製造)大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)の子会社で、パワー半導体向けシリコンウエハー生産などに強みを持つ。上場時には今年1~6月で最大の110億元(約2300億円)の新規調達に成功した。また、8月には同じくファウンドリー大手の華虹半導体(14年に香港市場上場)も科創板に上場し、調達額212億元は今年最大のIPOになりそうだ。

 8月に深圳証券取引所の新興企業向け市場「創業板(チャイネクスト)」に上場した「固高科技(Googol Technology)」にも注目したい。同社は1999年…

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週刊エコノミスト

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