インタビュー「円安は日本の国力低下が背景」渡辺博史・国際通貨研究所理事長
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財務省で為替政策を担う「財務官」を務めた渡辺博史・国際通貨研究所理事長に、円安の要因や今後の為替介入の見通しを聞いた。(聞き手=浜條元保/中西拓司・編集部)
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ドル・円為替相場は2022年以降、1ドル=120円程度から急激に下落し、150円前後で推移している。この間、30円程度の円安となったが要因は二つある。一つは日米の金利差だ。論理的な理屈はないが、米国金利が日本より3%以上、高くなるとドル高になり、それより縮まると円高になるという、誰も説明できない法則性がある。この「30円」のうち、半分は日米金利差が原因とみている。
輸入依存見透かされ
一方、もう一つの要因は日本経済全体に対する総合的な評価にあると考えている。ウクライナに侵攻したロシアに対して各国は経済制裁を実施したが、エネルギーや食料を自前で調達できる国には効果が薄いことが露呈した。その延長で、エネルギーも食料も輸入に頼っている日本やドイツの経済構造が、逆(マイナス)に評価されたのではないか。
日本経済に対しては、1ドル=80円、90円だった時代の過大評価がやや残っており、115円や120円に収まっていたが、やはり経済の実態を見ると「弱い」と見透かされ、今の円安レベルにつながった。日米金利差と、日本の国力に対する評価の二つが合わさって、30円程度円安になったとみている。
今後のドル・円為替相場は米国の金利がどう推移するかで左右される。米連邦準備制度理事会(FRB)が今年に残り1回、0.25%程度の利上げをするかどうか別にして、今後大幅な利上げはないとみている。一方で、すぐに急激に下がるという見通しもない。
現在米国で起きているインフレの最大の要因は、新型コロナで供給が収縮し、本来なら賃金が減る場面で、その支援のために40兆円超にも上る財政支出をしたことだ。その結果、供給をはるかに上回る消費が…
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週刊エコノミスト
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