米シェール革命がもたらした中東新秩序形成過程の「奇襲」 黒木亮
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10年前の2013年9月10日、米国のオバマ大統領は「米国は世界の警察官ではない」と、テレビ演説で宣言した。
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政策転換の大きな理由の一つが、シェールガスとシェールオイルの開発進展によるエネルギー自給体制の確立だ。地中深くにある硬い頁岩(けつがん)(シェール)の微細な隙間(すきま)に閉じ込められたガスと原油は、長年採掘が困難とされてきたが、技術革新によって10年代に入り、生産量が急増した。
米軍の撤収
これにより米国は19年にエネルギーの純輸出国となり、約1世紀にわたって堅持してきた中東の石油権益に固執する政策の放棄が可能になった。03年からのイラク戦争や08年のリーマン・ショックによる財政負担、トランプ前大統領のアメリカ・ファーストの方針、中国の台頭による極東情勢の緊迫化も、中東方面からの撤退を加速させた。その結果、米軍は11年にはイラクから、21年にはアフガニスタンから撤収した。
1948年の建国以来、イスラエルは米国から一貫して支援を受け、4分の3世紀にわたってアラブとの戦いに明け暮れてきた。
両国の強固な結び付きは、今も不変である。
米国では、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官、ロバート・ルービン元財務長官(元ゴールドマン・サックス共同会長)、『ニューヨーク・タイムズ』を所有するサルツバーガー家、マーク・ザッカーバーグ・旧フェイスブック共同創業者など政財界とエリート層にユダヤ系が多く、イスラエル系ロビー団体AIPAC(American Israel Public Affairs Committee=米イスラエル公共問題委員会)が強力なロビー活動で、反イスラエル的な議員を選挙で落選させるため、米国が反イスラエル的政策を採るのは不可能である。
そのことは、今回、国連安保理に提出されたイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘中断を求める決議案に対し…
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週刊エコノミスト
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