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PBR1倍割れ企業に株価上昇圧 PBR向上が見込める注目10銘柄はこれだ! 山本伸

 株価純資産倍率(PBR)1倍割れの上場企業には、株価上昇への強いプレッシャーが働く。株式テーマとしても妙味がある。

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 東京証券取引所は3月、プライム市場とスタンダード市場の全上場企業に対し、資本効率を上げてPBRを高めるよう要請した。実現するには株主還元を強め、株価を引き上げる必要がある。実際、上場企業は相次いで中期経営計画などにPBRを向上させる方策を記し、株価に反映したケースが少なくない。

低PBRの自動車部品

 半導体商社の萩原電気ホールディングス(HD)はPBRがようやく1倍を超えた程度で割安だ(11月中旬現在、以下同じ)。車載の半導体や電子部品などを中心にデンソー向けが売上高の6割に達する。従来は自動車業界の好不調が業績にダイレクトに影響したが、自動車の電動化が急速に進んだため、コロナ禍でも業績が悪化した期間はわずかだった。2023年3月期の本業のもうけを示す営業利益は過去最高の67億円だった。24年3月期は前期を24.2%上回る83億円を予想している。トヨタ自動車が電気自動車(EV)を26年に世界で150万台を販売する目標を掲げており、萩原電気には大きなチャンスだろう。

 自動車部品のASTIはPBR0.5倍台、PER6倍台と非常に割安だ。車載電装品と二輪車用ワイヤハーネスの受注が急回復している。11月9日には24年3月期業績予想を上方修正し、営業利益を前回予想比27.8%増の23億円とした。前期比では21.4%増だ。

 豊田自動織機はPBRが約0.8倍。トヨタグループの持ち株会社的な存在であり、莫大(ばくだい)な株式含み益を持ちながら、この水準は低いといえる。同社はフォークリフトのシェアが世界1位で、海外売上高比率は7割に上る。また、次世代EV用電池をトヨタと共同開発し、有望視されている。株価は1月4日から11月14日にかけて69%上昇した。

 INPEXはPBRが0.7倍台の割安銘柄。前身企業は国策会社の国際石油開発と帝国石油で、今も経済産業相が発行済み株式の19.9%と「黄金株」を1株保有する。株主総会で全ての議決に拒否権がある株式のことだ。つまり、INPEXの買収は不可能であることから、株価はその分だけ割安になっている。しかし、東証の市場改革を主導してきた経産省にとって同社のPBR水準は都合が悪い。

 11月9日に23年12月期最終利益予想を3200億円から3400億円に上方修正した。今後、大幅な増配や大規模な自社株買いをしてもPBRが1倍を超えないようなら、政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)による買収もあ…

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