実質賃金 来年後半中にプラス転化か 消費の押し上げは限定的 宮嶋貴之
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コロナ禍で消費行動も変わっており、経済の好循環が実現するには時間がかかりそうだ。
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2024年の日本経済を展望するうえで、大きな注目点の一つが実質賃金の動向であろう。現状の賃金伸び率をみると、名目賃金は近年ではまれにみる高水準だが、物価の変動を調整した実質賃金は今年9月まで18カ月連続で前年同月比マイナスが続いている。これが個人消費の停滞を招いているが、筆者は来年後半中にはプラス転化するとみている(図)。
現状の物価高はコロナ感染拡大やウクライナ危機、円安を契機とする輸入価格上昇、すなわち「コストプッシュ型」の側面が強い。しかし、来年は景気改善の中で賃金がさらに伸びて、サービスなどを中心に物価がさらに押し上げられるという「ディマンドプル型」のインフレに変わっていくかどうかがポイントだ。そうなれば、日銀はマイナス金利解除に向かうことになる。その起点となるのは、言うまでもなく賃金だ。
来年の見通しはどうか。名目賃金のトレンドを考える上で24年の春闘が鍵を握るが、24年のベアの伸び率について筆者は23年度の物価伸び率の見込み(3%弱程度)などを踏まえ、2.5%程度とみている。賃金全体の伸び率はボーナスや残業代にも左右されるが、基調的な伸び率は2%強に徐々に押し上がっていくのではないか。
物価については、サービス価格は賃金上昇によって徐々に上昇テンポが加速するとみられるが、原油や円安による物価押し上げ効果の縮小(ベース効果の剥落)や政府の物価高対策(ガソリンなどへの補助金)により、エネルギーを含む財を中心に物価全体の伸び率は今年よりは抑えられよう。
個人消費は抑制的
名目賃金と物価の想定から考えると、来年の実質賃金の前年比マイナス幅は徐々に縮まり、来年後半中にはプラス転化に至るとみている。日本経済にとって実質賃金のプラス転化は大きな朗報であり、日銀のマイナス金利政策の解除も近づくようにみえる。
ただし、もう一つのポイントは、賃金上昇を起点として、サービスなど物価全体を押し上げる波及効果が大きくなるかどうかだ。そのためには、賃金上昇に伴い個…
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週刊エコノミスト
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