四世左團次没後1年 長男の男女蔵らがゆかりの演目で追善 小玉祥子
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舞台 團菊祭五月大歌舞伎 四世市川左團次一年祭追善狂言 毛抜
敵役から英雄まで多くのあたり役を持った立役(たちやく)、四世市川左團次が昨年4月に没して約1年が経過した。歌舞伎座の「團菊祭五月大歌舞伎」昼の部では、「一年祭追善狂言」として「毛抜(けぬき)」が上演され、四世が得意とした主役の粂寺弾正(くめでらだんじょう)を長男の市川男女蔵(おめぞう)が演じている。
「雷神(なるかみ)不動北山桜」の三幕目にあたり、七世市川團十郎が「家の芸」に選定した「歌舞伎十八番」に数えられる。
長く上演が絶えていたのを、二世左團次が明治42(1909)年に岡鬼太郎の脚本により復活した左團次家には縁の深い演目である。
文屋豊秀の婚約者である小野春道の息女、錦の前が病気になり、輿(こし)入れは延期されていた。案じた豊秀は真相を確かめようと家臣の粂寺弾正を小野家に派遣する。
春道の家来の八剣玄蕃(やつるぎげんば)は錦の前は奇病にかかっているので破談にしたいと弾正に伝える。弾正は錦の前と対面し、彼女の髪の毛が逆立つようすを目撃する。
弾正は接待に現れた秀太郎や腰元の巻絹(まきぎぬ)に戯れ、手ひどく振られるが、その間も錦の前の病気の正体を突き止めようと考えをめぐらす。その眼前で、鉄製の毛抜が動き出し、弾正は驚く。だが試みに立てた銀製の煙管(きせる)は動かなかった。一方、鉄製の刀の小柄(こづか)は動いた。
そこに小野家の腰元であった小磯の兄と名乗る小原万兵衛が現れ、小磯は春道の子、春風の子を身ごもったが難産で死んだので、妹を返せと言う。弾正の機転で偽りが現れた万兵衛は逃げようとするが、弾正に討たれる。万兵衛は偽…
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週刊エコノミスト
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