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歌曲の本質を繊細に深く表現するテノール&ピアノ 梅津時比古

プレガルディエン(右)とゲース ©︎大窪道治 トッパンホール提供
プレガルディエン(右)とゲース ©︎大窪道治 トッパンホール提供

クラシック 歌曲(リート)の森――詩と音楽 Gedichte und Musik

 歌曲は音の芸術と言葉の芸術が溶け合ってできている。深い広がりを持った詩を基に、作曲家が詩句の一つひとつ、そして全体を繊細に解釈して独自の世界を作り上げる。

 不思議なのは、優れた歌曲を優れた歌手や演奏家が歌唱・演奏した場合に、その国の言語を知らずとも、歌曲芸術を堪能できること。もちろん、始まる前に歌詞対訳には目を通さなければならないだろう。しかし、その国の言語に通じていても、歌っている時にその意味がすべて分かるわけではない。

 例えば、日本歌曲が舞台で歌われた場合、日本人なら歌詞がよく分かるか、と考えれば答えは明らかだろう。日本語オペラにも字幕が付くのは常識になりつつある。

 反対に、歌われる言語を知らなくとも、良い演奏の場合、その世界は確実に伝わってくる。

 5月22日(水)と24日(金)、テノールのクリストフ・プレガルディエンとピアノのミヒャエル・ゲースによる「歌曲(リート)の森」が東京都文京区のトッパンホールで開かれる。

 おそらく今、彼らほど繊細に、深く、歌曲の本質を表現する歌曲デュオは他にいないだろう。一般的に「従」になりがちなピアノが、この2人においては全く違う。ゲースのピアノが天才的な解釈でプレガルディエンを触発し、それに対してプレガルディエンが新たな色と精神で応え、互いに呼びかけ合い、結果として1+1が3にも4にもなる。

 綿密な準備がされていながら、その場で常に新しい芸術を聴かせてくれる。

 この2人は何度もトッパンホールで公演し、このホールの響きを知りつくし、幾多の名演を聴かせてくれた。

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