日韓のセンスを巧みに融合 相乗効果で生まれたリメイク作 寺脇研
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映画 アンダー・ユア・ベッド
20年前まで、韓国では日本文化がシャットアウトされていたのをご存じだろうか。1945年に日本から独立し65年に国交回復を果たしてからも、植民地支配時代の忌まわしい記憶ゆえ文化排斥政策がとられ、韓国内での流通を一切禁じられていたのである。
98年に誕生し民主化を完全に果たしたキム・デジュン(金大中)政権は画期的政策転換を行い、積極的に文化交流を進める方向に転じた。20世紀末の日韓関係は、小渕恵三首相とキム大統領の間で、過去の歴史にいつまでもとらわれず未来志向で進もうという機運になっていたのである。当時わたしは文化庁文化部長の職にあり、そうした方針に基づき韓国政府と協議を重ねた。段階的に進められた日本文化開放がめでたく完成を見たのは、2004年だった。
村上春樹や吉本ばななが大ベストセラーになり、日本のアニメ、映画、ドラマ、音楽、漫画など多岐にわたって韓国で人気を博す。同時に日本でも、「冬のソナタ」に始まるドラマ、映画やK-POPの〈韓流ブーム〉が巻き起こり今に至るのはご承知の通りだ。最近では各分野で共同製作の流れができ、国境を越えて産業化されつつある。
この映画「アンダー・ユア・ベッド」は、映画業界におけるその最新形といっていい。角川グループと密接な関係を有する製作母体は、初めて設立された日韓共同製作を主たる目的とする韓国企業であり、東京に本拠を構えている。角川ホラー文庫刊である大石圭の原作が19年に角川映画で映画化された後、今度は日韓の才能を糾合して世界に挑もうというプロジェクトにより、作品が欧米の映画祭で注目されているSABU監督を起用してリメイ…
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週刊エコノミスト
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