物流「2024年問題」は農林漁業と建設、電力・ガス、製造に影響大 北辻宗幹
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トラックドライバーの長時間労働を減らすには、非効率な取引慣行の是正が必要だ。
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2018年に成立した働き方改革関連法で、一般企業は19年から時間外労働の上限規制が適用されたが、自動車運転業務や建設業など一部業種は、規制適用が5年間猶予されていた。24年4月からこれら業種にも規制が適用される。「2024年問題」とは、トラック運転手の残業規制強化により生じる問題を指す。
全日本トラック協会の調べによると、時間外労働が年960時間を超えるドライバーがいると回答した事業者は、全体の約3割に上る。長時間労働が常態化する背景には、物流業界特有の非効率な商慣習がある。例えば、物流施設などでドライバーが荷積み・荷降ろしまで長時間待機を強いられる“荷待ち”がある。宅配便の再配達増加も長時間労働を招いている。
トラック運転手の長時間労働には、物流業界の深刻な人手不足が影響している。日銀短観の調査結果によれば、郵便・運輸業の人手不足感は、飲食業や建設業などと並び強く、電子商取引(イーコマース、EC)市場の拡大などに伴い、輸送需要が増加する一方で、重労働にもかかわらず賃金が低いなどの理由で、就労希望者は十分に増えていない。
雇用増で1人当たり労働時間の減少をカバーするのは難しく、このままでは物流機能がまひする可能性がある。日本の物流の大部分はトラック輸送に依存しており、政府の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」によれば、企業の対策がないケースでは、経済全体の輸送能力は24年度に14.2%不足すると試算されている。
関係者の行動変容必要
「経済の血液」でもある物流の機能不全は、幅広い経済活動に悪影響を及ぼす。産業連関表によれば、生産に必要な道路貨物輸送サービスの投入割合(生産物を1単位生産するのに必要な道路貨物輸送の係数)は、農林漁業、建設、電力・ガス、製造業で1%を超えている(図)。農林漁業では、新鮮な農産物などを消費者に届けることに支障をきたすほか、建設、電力・ガス、製造業では、原材料・資材の調達が滞り、生産活動が制約される可能性がある。
こうした事態…
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週刊エコノミスト
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