硫化物系全固体電池でトヨタが出光と攻勢へ 2027~28年の量産化目指す 東哲也
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次世代蓄電池として有力視される全固体電池。電気自動車の利便性を飛躍的に向上させると期待される。
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電気自動車(EV)をはじめ車載用に搭載される、全固体電池の本命とされる硫化物系全固体電池の実用が本格化する兆しだ。海外では米ソリッド・パワーや韓国サムスンSDIが試作ラインを構築し、サンプル出荷を開始している。また、リチウムイオン電池(LiB)トップの中国CATLや同2位の中国BYDなどは生産技術の確立に注力中だ。サムスンSDIは2027年ごろ、CATLは30年ごろに量産化する見通しだ。
一方、注目を集めているのが硫化物系の特許件数世界最多で、硫化物系の開発を先導してきたトヨタ自動車。硫化物系固体電解質を生産する出光興産と技術開発および事業化で協業し、27~28年の量産化を目指す。
全固体電池は、有機電解液の代わりに固体電解質を使用したLiB。高入出力、高安全性、長寿命に対応するほか、高容量電極(ハイニッケル正極、シリコン負極、リチウム金属負極など)を使えば飛躍的なエネルギー密度の向上も図れる。これによりEVの超急速充電(最短数分程度)や1充電当たりの航続距離の延長が可能となる。
23年9月発表のパナソニックグループの小型全固体電池は3分で8割の充電が可能なほか、充放電可能なサイクル回数は数万回に達する。なお、一般的なLiBは3000回程度となっている。
現状は半固体が普及
全固体電池の種類としては硫化物系のほかに、酸化物系、正極材と負極材に電解液をあらかじめ含浸させた「半固体電池」があり、現状はこれらが普及している。
酸化物系では英イリカ、FDK、TDK、村田製作所などが環境発電やIoT(モノのインターネット接続)電源に使われる小型用途向けに量産中だ。製造プロセスは構造が類似する積層セラミックコンデンサー(MLCC)の転用が中心。車載用…
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週刊エコノミスト
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