新NISAにも盲点 損失は相殺も繰り越しもできず 長内智
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利点が多い新NISAだが万能ではない。ぜひとも「盲点」を押さえておきたい。
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盲点① 損益通算・繰り越し控除はなし
現在、新NISA(少額投資非課税制度)を活用して将来に向けた資産形成を行おうと考えている人は多いと思われるが、実際にNISA口座を通じて投資する場合には事前に確認しておくべき注意点がある。
具体的には、個人投資家の多くが利用している特定口座と異なり、非課税のNISA口座では「損益通算」と「繰り越し控除」を利用できないということだ。
損益通算とは、同じ年に発生した利益と損失を相殺することであり、損失を相殺しない場合に比べて、その年に支払う税金を減らすことができる。例えば、損益通算が可能な特定口座の場合、年末が近づくと、含み損を抱えた株式や投資信託等を売却して損失を確定させる「損出し」により、それまでの実現益と損益通算を行うことができる。
しかし、NISA口座で損失が発生した場合は、特定口座の利益との損益通算はもちろん、NISA口座内での損益通算もできない。なぜなら、NISA口座の収益と損失は税務上存在しないという扱い(=非課税)になっているためだ。
また、特定口座では、損益通算をした後に損失が残る場合、確定申告を行うことにより、その損失額を翌年以降の利益から最大3年間繰り越し控除することができる。多少手間はかかるが、保有する株式や投資信託等の売却によって大きな損失を出した場合には、忘れず活用したい制度だ。他方、NISA口座では損失の繰り越し控除を行うこともできない。
このようにNISA口座には、投資で得た利益が非課税になるという恩恵がある一方、損失が生じると、特定口座の方が税負担が軽くなるというケースも存在する。新NISAを開始する際、非課税というメリットばかりに目が行きがちとなり、損失が出た場合のことを考える人はあまりいないだろう。その結果、新NISAの潜在的なデメリットをどうしても過小評価してしまいやすい。
こうした傾向は、とりわけ株式市場が堅調な場合に顕著となる。しかし、新型コロナ危機や個別企業の業績悪化に伴う株価下落などにより、NISA口座で大きな損失を抱えた人は少なくないということにも留意したい。
実際の日本株の損益状況について、NISA制度が初めて導入された2014年初め以降のTOPIX(東証株価指数…
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