教養・歴史

背中合わせの民主主義と権威主義 「自分は民主主義国民だ」という認識を疑うための一冊 高橋克秀

『民主主義を装う権威主義 世界化する選挙独裁とその論理』 東島雅昌著 千倉書房、6160円

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 世界の国々を政治体制で分類すると権威主義体制の国は90カ国に及び、民主主義国の数と拮抗(きっこう)している。西側諸国の住人は、選挙がデモクラシーの正統性を担保していると信じている。この意味で中国は独裁国家であり、インドは世界最大の民主主義国家とされる。しかし、インドの実情を子細に見ると、選挙は実施されているものの統治は相当に強権的である。選挙の有無が独裁と非独裁の境目になるわけではない。

 独裁国家の指導者たちはあからさまに不正をするよりも、表面上は民主的な選挙を偽装して巧妙に支配を強化する例が多い。独裁者にとっては選挙で圧勝することで民衆を威圧したり、選挙結果によって支持の分布状況を把握できるだけでなく、「選挙は反体制勢力に分裂を生み出す装置として機能しうる」からだ。

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