教養・歴史 2023年の一冊
対立する経済学の両巨人を通じ米国の戦後経済社会を考察 原田泰
有料記事
『サミュエルソンかフリードマンか 経済の自由をめぐる相克』 ニコラス・ワプショット著 藤井清美訳 早川書房、3740円
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本書は、経済学の2人の巨人サミュエルソンとフリードマンを通じて、アメリカの戦後経済社会思想を論じたものだ。
サミュエルソンは、財政政策を通じて経済を安定化させ、福祉政策を進めるべきと考えている。一方、フリードマンは、政府活動の縮小を求める。社会福祉制度(代わりに負の所得税を提唱)や累進課税に反対、財政政策の景気刺激効果の低さ、インフレと失業のトレードオフの不安定さを指摘し、サミュエルソンたちの正統派に挑戦した。
フリードマンの主張はイデオロギーを含んでいるが、財政政策の効果、インフレと失業の関係、固定為替制度に代わる自由変動為替制度の提案などは、実証的にも正しい。ただし、貨幣政策についての具体的政策提言は必ずしもうまく機能しなかった。
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週刊エコノミスト
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