教養・歴史

対立する経済学の両巨人を通じ米国の戦後経済社会を考察 原田泰

『サミュエルソンかフリードマンか 経済の自由をめぐる相克』 ニコラス・ワプショット著 藤井清美訳 早川書房、3740円

>>特集「2023年の一冊」はこちら

 本書は、経済学の2人の巨人サミュエルソンとフリードマンを通じて、アメリカの戦後経済社会思想を論じたものだ。

 サミュエルソンは、財政政策を通じて経済を安定化させ、福祉政策を進めるべきと考えている。一方、フリードマンは、政府活動の縮小を求める。社会福祉制度(代わりに負の所得税を提唱)や累進課税に反対、財政政策の景気刺激効果の低さ、インフレと失業のトレードオフの不安定さを指摘し、サミュエルソンたちの正統派に挑戦した。

 フリードマンの主張はイデオロギーを含んでいるが、財政政策の効果、インフレと失業の関係、固定為替制度に代わる自由変動為替制度の提案などは、実証的にも正しい。ただし、貨幣政策についての具体的政策提言は必ずしもうまく機能しなかった。

残り382文字(全文781文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事