空き家税制改正で「管理不全空き家」は2024年から増税に 工藤晴子
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耐震性が劣る空き家を相続後に売却した場合、税優遇がある。2024年からは対象が拡大し、売りやすくなった。
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国土交通省が空き家所有者5791人から回答を得て2020年に公表した「空き家所有者実態調査報告書」によると、空き家の取得方法は「相続」が54.6%で最も多かった。国は増え続ける空き家を巡る問題を改善するため、所有者に空き家の売却を促す法整備を進めてきた。そのうち、24年1月1日から税負担が変わる二つの税制改正について説明しよう。
一部の空き家は税負担増
家屋や土地を所有すると固定資産税(標準税率1.4%)が毎年かかる。住宅の敷地にかかる固定資産税については、200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)を6分の1、200平方メートルを超える部分(一般住宅用地)を3分の1に減額するという特例がある(地方税法349条の3の2)。「住宅用地特例」ともいう。
ところが、23年12月13日に施行された「改正空家等対策の推進に関する特別措置法(改正特措法)」により、一部の空き家の敷地については住宅用地特例を適用できなくなった。つまり、固定資産税の負担が大幅に重くなった。同税の計算は1月1日を基準とすることから、改正特措法の影響が土地所有者に及ぶのは、実務上は24年1月1日以降となる。
新たに住宅用地特例を適用できなくなった土地とは、市区町村長から勧告を受けた「管理不全空家」の敷地だ。管理不全空家は適切に管理されておらず、そのまま放置すれば近隣の生活環境に悪影響を与えるおそれのある空き家をいう。市区町村長はそのような状態にある空き家の所有者に改善を指導するが、改善が見られない場合は勧告できることになっている。
空き家所有者は管理にかかる費用だけでなく、固定資産税や都市計画税を毎年負担する必要がある。他人に貸したり、店を開いたりするなどして活用しなければ、費用負担が重荷になる。親の死亡にともなって空き家を相続した人は活用するか、早めに売却したほうがいいだろう。そこで国は、空き家を相続した人が売却しやすくなるよう税制を整備した。
相続空き家が売りやすく
1人暮らしだった親が亡くなり、空き家となった実家を相続した人がそれを売却する場合、一定の要件を満たせば「空き家特例」(租税特別措置法35条3項)を適用でき、税負担を減らせる。実家を売却した人が空き家特例を適用できると、譲渡所得の計算上、最大3000万円を控除できる。譲渡所得とは、建物や土地の売却額から取得費(購入代金+購入諸費用-減価償却費相当額)と売却費用を差し引いた金額をいう。空き家売…
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週刊エコノミスト
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