経済・企業

急増!“人手不足”倒産 まずはDXで生産性向上を 旭海太郎

物流業界の人手不足は深刻(東京都内)
物流業界の人手不足は深刻(東京都内)

 時間外労働の上限規制が適用され、深刻な人手不足が懸念される「2024年問題」を前に、顕在化している問題点を浮き彫りにする。

年間260件は過去最多 半数が建設・物流

 人手不足を要因として事業を畳むケースが、足元では急激に増加している。2023年の人手不足倒産の件数は260件を記録し、年間として過去最多を更新。これまでで最も多かった19年の192件を大幅に上回る結果となった。

 さらに特筆すべきは、建設業で91件、物流業で39件に及んだということ。合計で130件、半数をこれら2業種が占めているという事実だ。いずれも24年4月に時間外労働の上限規制が適用されることで、深刻な人手不足が懸念される「2024年問題」が叫ばれている業種である。大きな節目が迫っているが、事態はすでに顕在化しているといえるだろう。

倒産の約75%が小規模企業

 人手不足倒産が生じる一例はこうだ。人手不足が進行すれば、既存・新規それぞれで需要の獲得が制限され、商品・サービスの品質低下も生じる。そうした事情によって売り上げの低迷を招き、納期厳守を最優先に外注依存度も高まれば、利益面も苦しくなる。本来であれば、売り上げを拡大させて増収効果によって資金繰りを厚くしたいが、利益を残せず事業継続を断念──。こうしたケースが後を絶たない。

 また、従業員の退職が相次げば、残業時間の増加や休暇取得の減少が常態化し、モチベーションが低下することでさらに退職が広がる。このような悪循環は、一度陥ると脱することは容易ではない。

 こうした現象は、小規模事業者ほど生じやすい。従業員数が少ない場合、1人当たりの業務負担が大きく代替人員の確保が困難であることや、量質ともに重要な業務を担うキーマンの不在による退職ダメージが大きいことが理由だ。実際に、23年の人手不足倒産260件のなかで、約77%にあたる199件が従業員10人未満の企業となっている。

 また、23年は人材の確保・定着の定石である「賃上げ」がトレンドだったが、資材・エネルギーコストの高止まりが顕著な一年でもあった。各種コストを考える際に、生産活動に欠かせない資材・エネルギーの高騰で利益が圧迫されると、賃上げ=人件費の上積みは後に回さざるを得ない。企業としては賃上げを行うことで従業員の流出を食い止めたいものの、すぐにはかなえることができないという現実に直面する。

 実際にどれほどの…

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