CES2024現地リポート 透明ディスプレーに自由視点XR 麻倉怜士
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今年のCESはAIや映像技術で大きな進展が目立った。現地からリポートする。
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世界最大の技術見本市「CES2024」で、もっとも強烈に印象に残ったのは、韓国のLG電子のブースで出展担当者が発した言葉だ。「もう、来年はAI(人工知能)について誰も言わなくなるだろう」。今年は、誰もがAIに言及した。LGのライバルである韓国のサムスングループは「AI for All」を掲げて、全製品AI武装の構えだった。LGはAIを「Affectionate Intelligence(優しい知性)」と言い換え、家電のネットワーク化、AI化を強力に進めるとプレス会見で宣言した。その会社が、来年はもう「AIは誰も言わない」とは、今後はもはやAIは水か空気のようなものになり、それを採用するのが当たり前で、あえてそれを言う必要もないほど、AIが普遍化し、昔の流行語のユビキタス状態になるということだ。
確かにこれまでの概念レベルから、どんどん人が使う製品に取り入れる“エッジAI”の流れが見えた。業界で初めて生成AIのチャットGPTが、フォルクスワーゲンの音声アシスタントIDA(アイーダ)に追加採用されたのは、まさに今年の旬だ。
米音声技術会社のセレンスのブースで、電動車「ID.7」のチャットGPTを体験した。IDAに「ハローIDA、最高のクルマメーカーは、どこですか」と聞いてみた。すると、「それはフォルクスワーゲンですよ!」。同じ質問をIDAに追加採用されたチャットGPTにしてみたら、「最高の車というものは、大いに個人の好みに依存するのです」という大人の答えが返ってきた。今後、クルマに生成AIは必須になる予感がした。当然、クルマに使われる半導体の量は増える。
電源オフ時はインテリアに
テレビの新しい切り口が「透明」だ。これまでテレビに関する話題は、コンテンツや画質など電源がオンの状態での性能はどうかに集中していた。それは当たり前のことで、電源オフ時にどうするなどの議論は、これまで皆無だった。ところがCES2024では、LGが77インチ/4Kの透明有機ELテレビを大々的にPR。その訴求点が「黒い画面からの解放」だ。
大きな黒いテレビは電源オフ時にはうっとうしい存在だ。そこで放送やコンテンツを見ない時は透明モードにして、向こうの景色を見せる。透明だからテレビ本体を壁に沿って配置しなくても、部屋の中央にも置けるし、インテリア材にもなる。写真や映像を表示する透明フォトフレームとしても活用可能だ。本体画面下部には情報表示「T-Bar」があり、ニュースや天気予報、再生中のメディアコントロールなどを常時表示する。しかし画質は、消したら黒い通常の有機ELテレビにははるかに劣る。透過率は45%で、透き通るわけではない。ピーク輝度は600nits(1nitsは1平方メートル当たり1カンデラ)、平均で200nitsという程度。ピークが3000nitsに達した最新型の有機ELパネルとは比較にならない。でも売り場に設置される広告や展示などのビジネス向けでは活用可能だろう。
その点、サムスンの透明マイクロLEDのデモは説得力があった。マイクロLEDは有機ELより、1画素中の発光領域は小さいから、透明度が高い。ブース展示は超横長画面だ。1.5メートルほど奥に液晶ディスプレ…
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週刊エコノミスト
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