法務・税務

金&暗号資産も課税対象 所得税・相続税完全ガイド 坂本新

純金製の仏具を非課税とするなら、相応の理由の説明が必要(筆者撮影)
純金製の仏具を非課税とするなら、相応の理由の説明が必要(筆者撮影)

 高騰期には税務署も注目する。金も暗号資産にも複雑な税制があり、値上がりだけに踊ることなく、しっかりと備えたい。

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 金や暗号資産の価格が高騰しているが、気になるのは売却したり相続したりした時にかかる税だ。税制を踏まえて適切に申告しなければ、後から税務調査を受け、追徴課税までされかねない。特に、価格変動が激しい暗号資産は、納めきれない税負担が発生するリスクもある。値上がりだけに踊るのではなく、税制を熟知してしっかりと備えたい。

〈金地金〉

 金地金や金貨を売却して得た利益には原則、「譲渡所得」として所得税がかかり、給料など他の所得と合算して「総合課税」の対象となる。ただ、金地金や金貨は所有していた期間によって計算方法が変わる。所有期間が5年以内の場合は「短期譲渡所得」、5年超の場合は「長期譲渡所得」として区分し、長期保有したほうが有利な仕組みになっている。

 具体的には、5年以内の場合は「売却金額-(購入金額+売却費用)」で譲渡益を計算し、ここから年間50万円の特別控除を差し引いた譲渡所得に対して課税される。金地金や金貨の売却以外に譲渡所得がなければ、譲渡益が50万円以下なら申告が不要。つまり、50万円を超えた部分が課税対象になる。そして、5年超の場合は、この課税対象の金額が半分になる(図1)。

 ただし、特に長期保有の場合は購入時の金額が分かるように、取引業者から購入時に渡される「計算書」をしっかりと保存しておきたい。金地金の譲渡益の計算の際、購入金額が不明なら「売却金額×5%」が購入金額となり、譲渡益が大幅に増えることで支払う税金も多くなってしまう。計算書には購入価格や日付などが記されており、譲渡益の計算には不可欠な書類となる。

 金地金の売買情報は税務署がしっかり捕捉している。税制改正に伴って2012年1月以降、金地金を売却した人が得た金額(売却手数料差し引き前、消費税込み)が200万円を超えた場合は、業者が売却した人の住所、名前や取引内容などを記載した書類(支払い調書)を税務署に提出することになった。また、16年1月以降は支払い調書にマイナンバーの記載も義務付けられている。

 金地金を売却して多額の所得を得ながら無申告の場合、こうした支払い調書の情報を基に、税務署から申告を促す「お尋ね」と呼ばれる文書が届いたり、税務調査を受けたりすることがある。誰が金を売却して利益を得たかは税務署には筒抜けであり、金価格の高騰期には金地金を売却する人も増えるため、税務署が注目していることは忘れてはいけない。

仏具は「日常礼拝」必要

 金地金は相続税の申告の際にも問題となりやすい資産だ。被相続人(亡くなった人)から金地金を相続した場合、相続開始日(被相続人が亡くなった日)の時価で金地金の評価額を計算して申告する。相続開始日の業者の買取価格に金地金の重さを掛けて計算する方法が一般的だ。評価額が高額になれば相続税負担もその分、増えることになるが、申告後に納税資金が不足しないよう、生前に納税資金のメドを立てておきたい。

 現物で相続する金地金は、申告しなくても税務署にバレないのでは、と考えるのは早計だ。無申告が発覚する典型的なケースは、相続人が相続した金地金を売却する時だろう。200万円超の金地金を売却した際には、業者から税務署へ支払い調書が提出…

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週刊エコノミスト

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