なかなか売られない日本株 今年の需要超過予想は5.9兆円 鈴木誠一
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長期の投資の検討には相場観ではなく、売買の必要に迫られている投資家の需給動向がより重要となる。
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2023年に日経平均株価は28%も上昇した。しかし、年間の売買動向を見ると、日本株を大きく買い越しているのは海外投資家(6.3兆円)と事業法人(4.9兆円)だけである(図1)。
株価上昇が物語るほど、多くの投資家が強気な投資行動を取った結果とはなっていない。さらに強気な投資行動に見える海外投資家の6.3兆円の買い越しも、22年までの3年間で日本株を13.5兆円も売り越しており、その半分以下の金額を買い戻したに過ぎない。また、事業法人の買い越しの中身はほぼ自社株買いである。これも投資家センチメント(心理)と関係のない株主還元が買いの理由だ。
売り手筆頭が信託銀行で、5.4兆円と大きく売り越しているが、これは株価上昇に伴い株式の保有比率を下げるための売りで、年金のリバランスが大きな理由と考えられる。
このように見ると、1年間の長い期間の売買動向では、相場観で売買する投資家の影響はそれほど大きくなく、機械的な売買や必要に迫られて売買する投資家の影響が大きいというのが実際である。また、海外投資家と事業法人の買い越し合計は11.2兆円であるが、この買いにより昨年のプライム市場は158兆円も時価総額が増えている。買いの大きさもさることながら、売り手の少なさも日本株を上昇させる理由となっている。
売りに極めて抵抗力
日本株は、海外投資家次第と考えている方も多いのではないだろうか。意外と思われるかもしれないが、海外投資家の売買と日本株の上げ下げには大きな開きがある。
図2は、16年以降の日経平均と海外投資家の売買動向を累積したものである。この期間の海外投資家は日本株を16.4兆円も売り越している。にもかかわらず日経平均はこの間に1万7000円近くも上昇している。
海外投資家が売り越しても日本株が下がらない理由は、株式市場の好需給にある。そこで今年の日本株の需給構造を考えてみよう。ここでは、相場観を伴わない売買のみを抜き出している。
買い手で最も大きくなりそうなのが、自社株買い。金額は11兆円程度となりそうだ(図3)。昨年は8.8兆円という実績であったが、好調な企業業績と企業の株主還元姿勢の強まりから増加が期待される。
次いで金額が大きいのが個人投資家である。NISA(少額投資非課税制度)の拡充により、NISA以外も含めてバイ・アンド・ホールドの買いが2.5兆円程度まで膨らむこととなりそうだ。
市場からの退出に伴う再投資も2兆円程度になるであろう。東芝のように最近目立ってきている上場廃止銘柄に投資されていた資金が、上場廃止を理由に他の銘柄に再投資される分である。これらの買いを合計すると16.2兆円というかなり大きな金額となる。
一方、買いだけではなく…
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週刊エコノミスト
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