引き上がる地震・火災保険料 鬼塚眞子
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自宅の風水害などに備える火災保険料は今年中の引き上げが確実視されている。保険料引き上げ前に長期の契約を考えたい。
能登半島地震を契機に必要性を見直し
今年1月の能登半島地震を受け、地震保険の必要性が改めて見直されている。火災保険とセットで契約する地震保険は、付帯率や世帯加入率は年々上昇してはいるものの、伸びは緩やかで地域ごとのばらつきも大きい。一方、火災保険料は自然災害の頻発によって引き上げが続いており、今年中の値上げも確実視されている。住まいへの補償を確認する契機としたい。
能登半島地震では損害保険各社が発災直後から調査員を現地へ派遣し、保険契約者の自宅被害の状況把握や契約者との接触に取り組んでいる。そもそも、地震保険は地震や噴火、津波を原因とする家屋や家財の火災や倒壊、流失などの損害を補償する保険で、同じ火災でも地震を原因とする火災は火災保険では補償されない。地震保険は単独では契約できず、火災保険とセットで加入する。
マンションなどの集合住宅の場合は、専有部分の地震保険は各区分所有者が、エントランスや廊下、バルコニーなどの共用部分はマンション管理組合が、それぞれ契約するのが一般的だ。集合住宅の再建は修理費用の確保や所有者間の合意形成が必要になるなど、戸建ての再建よりも困難な要素もあるため、管理組合が加入する地震保険にも関心を持ちたい。
地震保険の対象は居住用の建物と家財だ。建物には付随する門や塀も含まれるが、門・塀だけの損害は対象外となる。契約金額は火災保険の契約金額の30~50%の範囲内で設定することになっている(ただし、居住用建物は5000万円、家財は1000万円が限度)。保険金は、建物、家財に「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の損害が生じたときに支払われる。
地域差が大きい加入率
地震保険は火災保険と異なり、最大で50%しか補償されないことに不満を漏らす人も少なくない。しかし、地震保険は被災後の生活再建を支えるための保険であり、地震保険法に基づいて国と損保各社が共同で運営している。契約者の声を受け、地震保険で支払われる保険金に上乗せして保険金を支払う火災保険の特約を用意している損保会社も複数ある。
損保各社で構成する損害保険料率算出機構のデータによると、火災保険に対する地震保険の付帯率は2013年度、58.1%だったのが、22年度は69.4%と10年間で11.3ポイント上昇した。また、世帯数全体に対する地震保険の加入率も、13年度の27.9%から22年度は35.0%へと7.1ポイント上昇している。ただ、いずれもまだまだ引き上げる余地が十分にある。
地震保険への加入は地域ごとのばらつきも大きい。都道府県ごとの付帯率では22年度、最も高かったのは11年の東日本大震災の被災地である宮城県の89.3%で、次いで南海トラフ巨大地震の発生が指摘される高知県が87.5%、16年に地震に見舞われた熊本県の85.9%と続く。最も低かった長崎県の54.8%とは大きな開きがあり、能登半島地震で大きな被害を受けた石川県は64.7%と40位、富山県は63.5%と42位だった。
世帯加入率も同様の傾向で、宮城県の53.6%をトップに愛知県の44.7%、熊本県の44.2%と続いているが、最も低い沖縄県は17.9%にとどまっている。また、石川県は30.2%と29位、富山県が27.0%と40位だった。過去に地震による大きな災害を経験した地域や、今後の巨大災害が懸念される地域で付帯率や世帯加入率が高い傾向にあるが、日本ではどの地域でも地震や噴火、津波の被害に遭うリスクはある。
直近は平均0.7%下げ
損害保険料率算出機構が算出する地震保険の基本料率は東日本大震災以降、段階的に引き上げられてきたが、22年10月の改定では全国平均で0.7%引き下げられた(図1)。この改定では、それまでの段階的な料率引き上げに伴う保険料不足分が全国平均で1.6%上乗せされたものの、耐震性の高い住宅の普及など各種データの見直しによって2.3%引き下げる効果も働き、全体としては引き下げとな…
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週刊エコノミスト
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