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マーケット・金融 トランプ再び

金融・調査26社アンケで“ほぼトラ”18社 日経平均4万8000円の声も 中西拓司・編集部

 11月の米大統領選が近付くにつれ、「もしトラ」というキーワードがささやかれ始めた。「もしもトランプ前大統領が再選されたら……」の略語だ。「もしトラ」が現実になれば、日米の株価や為替相場、政策・長期金利、原油・金価格はどのような影響を受けるのか──。本誌は、主要金融・調査機関26社を対象に緊急相場アンケートを実施した(2月9~16日)。

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 大統領選では、共和党のトランプ氏とともに、民主党では再選を目指す現職のバイデン大統領の指名が有力視される。アンケートでは、11月実施の本選挙が両氏による同じ顔ぶれになることを前提に、現時点でどちらが勝利するとみているか聞いたところ、18社が「トランプ勝利」と予測する一方、「バイデン勝利」とみるのは6社にとどまった(2社は無回答)。

 予備選でトランプ氏は連勝を続けている。アンケートを見る限りでも「トランプ勝利」との見方が強く、「もしトラ」から「ほぼトラ」へ進化しつつあるようだ。

「消去法」でトランプ氏

「今回の選挙は『Are you better off?』(暮らしは良くなった?)がテーマだ。米国経済・金融市場は絶好調だが、その恩恵にあやかっているのは資産家で、労働者や年金生活者はインフレに苦しんでいる。バイデン氏に目立った功績はなく、不満票の受け皿としてトランプ氏が優勢だ」。みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは指摘する。

 もっとも、各社ともトランプ氏を手放しで推しているわけではない。バイデン氏は高齢批判が根強く、インフレ対策など経済政策への評価も低迷しているため、トランプ氏の勝利はあくまでも「消去法」(信金中金など3社)の産物とする見方が大勢を占めている。

 一方、バイデン勝利には、インフレ対策の成否がカギを握るとの見方が多い。伊藤忠総研の高橋尚太郎・上席主任研究員は「インフレ鈍化が実感として広がり、バイデン政権への批判要素だった経済政策が再評価される」とみている。逆にトランプ氏に対しては、四つの刑事裁判や数多くの民事裁判を抱え、「選挙資金の枯渇」(レオス・キャピタルワークス)がアキレス腱(けん)になりそうだ。ともに不安定材料がある選挙戦の展望は現時点では非常に難しく、どちらに転ぶにしても僅差の戦いが予想される。

大型減税への思惑も

 アンケートでは、バイデン勝利、トランプ勝利の双方のケースについて、米ダウ工業株30種(米国株)、日経平均株価(日本株)の想定(現在~2024年末)を聞いた。米国株では、バイデン勝利の場合、各社平均の上限は4万687ドル、下限は3万5087ドル。トランプ勝利の場合は、上限は4万1954ドル、下限は3万5116ドルで、下限は両者ほぼ同じだったが、トランプ勝利の方が1300ドル弱の株高になるとみている(図1、拡大はこちら)。

「トランプ政権なら財政なども含め、株価を意識した政策を打ち出す可能性が高く、株式市場には底上げ要因になる」。三井住友トラスト・アセットマネジメント(AM)の上野裕之チーフストラテジストはこう指摘する。では、具体的にどのような経済対策が想定されるのか。各社が思い描いているのは第1次トランプ政権で実施された大型減税政策だ。

 トランプ氏が初当選した16年大統領選の直後は、株価が大きく下落する「トランプ・ショック」に見舞われたが、その後は減税政策が功を奏して株価が大きく回復し、「トランプ相場」とも言われた。どちらが勝利するかにかかわらず、26社中9社が大型減税への期待感を示す。大型減税が恒久化されれば景気刺激策となり、株価のプラス材料になるとみている。

 とはいえ、マイナス面の指摘も目立つ。その一つは対中関係だ。トランプ氏は米保守系FOXニュースのインタビュー(2月4日放送)で、自らが当選すれば中国からの輸入品に一律60%超の関税を課す可能性を示し…

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週刊エコノミスト

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