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臨床試験に進んだ体内ゲノム編集治療に注目 池谷裕二

撮影 中村琢磨
撮影 中村琢磨

池谷裕二の闘論席

 ゲノム編集と遺伝子組み換えの違いを説明できるだろうか。ゲノム編集は、直接DNAを切断してDNA配列に変異を誘導する。対して遺伝子組み換えは、外から別の遺伝子を入れることでこれを実現する。どちらもDNA配列を変更する遺伝子改変技術だ。

 かつて「遺伝子組み換え食品」が世間から猛反発を食らった苦い経験を生かし、業界関係者がうまく世論の対応を図ったため、表示義務のない「ゲノム編集食品」は順調に社会受容が進む。このあたりの巧みさはワクチン業界とは雲泥の差だ。ゲノム編集食品は農作物や魚介類まで幅広い。収穫量や品質を改善するものから、栄養価向上やアレルギー対策までさまざまなアイデアが施されている。

 現在、注目を集める分野は、臨床への応用だ。昨年11月に世界初となるゲノム編集による治療がイギリス、12月にはアメリカで承認された。活用の流れは止まらないだろう。がんを中心に糖尿病やHIV(エイズウイルス)感染症など54の臨床試験が進行している。

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