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米国株の強さの源泉は“経営者”と“株主還元” グーグルも配当開始か 今井正之
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世界の株式相場をけん引し、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるまでになった米IT大手7社について分析する。
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日経平均株価が2月下旬、34年ぶりに高値を更新したが、米国株は長期的に上昇を続けてきた。その特徴は優れた経営者と株主還元の組み合わせである。米国の投資家は、企業の成長段階では内部留保による自社事業への再投資が資本の合理性にかなうと考え、株主還元なしでも評価する半面、事業が成熟すると配当や自社株買いを強く求める。経営側も株主=オーナーとして当然の要求と捉えている。
筆者がアナリストとして初めて注目した銘柄はアップルで、当時のCEO(最高経営責任者)はスティーブ・ジョブズ氏だった。破綻の危機にあったアップルに復帰し、V字回復させたカリスマ。スマートフォンは急速に普及する兆しがあり、アップルの高い利益率に驚きと確信を持った。ヒット商品の連続で巨額の内部留保が蓄積されていたが、配当や自社株買いなどの株主還元は一切しない方針を堅持していた。
アップル株価9倍に
そのジョブズ氏が病に倒れた後、2011年8月からティム・クック氏がCEOを引き継ぎ、今日まで務めている。激情家でワンマンなジョブズ氏から対照的なクック氏に代わり、アップルは大丈夫かとの疑念もあった。当時から新製品開発能力やiPhone頼みの業績は危惧されていたが、現在もそうした傾向はあまり変わっていない。
一方、クック氏体制で変わった点は財務面にある。12年8月から約9.5セント(四半期ベース、分割反映後)の配当と自社株買いを開始し、大規模な株主還元にかじを切った。その後も毎年増配され、24年には24セントと10年あまりで約2.5倍となった。株主還元の効果もあり、株価は12年の20ドル台から24年は182.52ドル(2月23日終値)と約9倍となった。
さて、アップルのジョブズCEOが健在のころに、ライバルのマイクロソフトはスティーブ・バルマー氏がCEOを務めていた。創業者ビル・ゲイツ氏と米ハーバード大の同級生で、華麗な経歴の秀才だが、株価は低迷していた。投資家の不満は高まり、ついに14年…
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週刊エコノミスト
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