半導体株に脚光! 九州“TSMC効果”は20兆円 AI需要増でディスコなど有望 堤雄吾
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昨年末から日経平均株価は5700円以上も上昇した。その3分の1を占めるのが半導体関連の5銘柄だ。
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日経平均株価は2月22日、約34年ぶりに史上最高値を更新し、昨年末から2月28日までに5744円上昇した(終値ベース)。構成銘柄225社のうち、同指数の寄与度上位には1位・東京エレクトロン▽3位・アドバンテスト▽11位・SCREENホールディングス(HD)▽13位・信越化学工業▽23位・レーザーテック──の半導体株が目立つ。これら5銘柄だけで日経平均株価の上昇幅の3分の1(約1900円)を占めた。
半導体市況の回復期待に加え、生成AI(人工知能)ブーム、円安メリット、半導体工場の国内新設が半導体関連株の追い風となった。とりわけ、半導体受託製造世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県菊陽町に日本の第1工場を建設したことは、日本の半導体産業にとって歴史的な転換点といえる。2月24日には第1工場で開所式があり、年内の量産開始に向けて準備が進んでいる。
大規模な半導体工場の建設には一般的に3年程度を要するが、第1工場は2022年4月の着工から2年足らずで竣工にこぎつけた。日本政府の強力な支援やパートナー企業・地域社会との緊密な連携によって実現した。開所式に臨んだTSMCの創業者、張忠謀(モリス・チャン)氏は昨年10月、「九州は半導体製造に理想的な場所」と高く評価した。
投資案件続々
TSMCが新工場を予定する米アリゾナ州では、地元の労働組合との対立、米政府の補助金支給の遅れなどを背景に完成時期が延びているのとは対照的だ。同社は今年2月、先端半導体を生産する第2工場も熊本県内に建設すると正式発表した。年末までに着工、27年中に操業開始を目指す。両工場の設備投資額は計200億米ドル(約3兆円)を上回る見込みだ。日本政府は最大1兆2000億円規模を補助すると見られる。
政府は半導体を経済安全保障上の重要物資と位置づけ、国内生産能力の向上を後押ししている。一方、TSMCはこれまで台湾に一極集中してきた製造拠点の地理的分散を模索しており、両者の利害は一致している。同社は茨城県つくば市に3DIC(三次元集積回路)研究開発センターも構え、製造面だけでなく研究面でも日本を重要視する。
九州経済調査協会の推計によると、半導体関連の設備投資による九州地域(山口県・沖縄県も含む)への経済波及効果は21年からの10年間で20兆円超に上る見通し。TSMCの直接的なサプライヤーである半導体製造装置・材料メーカーだけでなく、建設業、機械産業、電気・ガス・水道業、金融業…
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週刊エコノミスト
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