投資・運用

レバレッジ型ETF 「上がれば買い、下がれば売る」 “下手な売買”の仕組みに注意 井出真吾

 株価上昇でレバレッジ型ETFの売買が活発になっているが、しっかりとその仕組みを理解することが肝心だ。

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 日経平均株価が2月22日に史上最高値を更新するなど急ピッチな株価上昇で、値動きが株価指数の動きの数倍となるレバレッジ型ETF(上場投資信託)の人気が再び高まっている。個別銘柄を選ぶ手間が省ける上、日経平均株価などより大きく値上がりするチャンスもあって、リスクを好む個人投資家を中心に活発に売買されているようだ。しかし、その仕組みと値動きの特性は思ったほど理解されていないかもしれない。便利で優れたツールだけに正しく理解して上手に利用したい。

 日経平均レバレッジ型ETF(日経レバETF)は「日経平均の2倍の値動き」という分かりやすさと値動きの良さが受け、株価上昇に連動して売買代金が増加傾向だ(図1)。年明けから株価が急上昇した2024年1、2月の月間売買代金は3・5兆円を超え、約33年ぶりに日経平均が3万3000円を回復した23年6月以来の水準だ。

 日経レバ型ETFの仕組みはシンプルで、運用会社は日々の取引終了時点で投信残高(純資産額)の2倍に相当する日経平均先物の買いポジションを保有する。例えば、純資産が100億円なら想定元本が約200億円となるように先物の保有枚数を調整する。こうして翌営業日の値動きが日経平均の約2倍となるようにしている。

 実際、横軸に日経平均、縦軸に日経レバETFの日々の騰落率をプロットしてみると見事に「y=2x」の直線に乗っており、日経平均が大きく値上がり、値下がりした日も、あまり動かなかった日も、日経レバETFは約2倍の値動きであったことが分かる。

気をつけたい「V字局面」

 日経レバETFの1日の騰落率は日経平均のほぼ2倍だが、ある程度の期間を保有した場合は2倍になるとは限らない。23年以降のように株価がほぼ一本調子で上昇する局面では、日経レバETFの値上がり率が日経平均の2倍よりも大きくなることもあるが、気を付けたいのが「買った直後に株価が下落してしまい、戻りを待つ」というものだ。この場合の株価の推移は「下落→上昇」なので「V字局面」と呼ぶことにしよう。

 日経平均がおおむね2万5000~2万9000円のレンジ相場で推移した22年は、2~3カ月タームのV字局面が4回あった。運悪くV字局面の直前に日経レバETFを購入してしまい、その後株価が購入時程度まで戻ったタイミング(V字局面の終わり)で売却した場合を検証すると、4回とも想定以上に悪い結果となった。

 例えば、4回のV字局面のうち最終的にわずかだが日経平均が上昇した2ケースでは、日経レバETFの値上がり率が日経平均の上昇率のマイナス5倍や0.6倍となった。一方、日経平均が下落した2ケースでは日経レバETFの下落率が日経平均の下落率の3~4倍だった。保有期間が2営…

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