日経平均の高値更新は“バブルではない好況感の前触れ” 年末には4万3900円も 市川雅浩
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過去にみられなかった企業改革や賃上げが実現し、日本株に「構造変化」が生じている。
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東京株式市場の日経平均株価は今年2月22日、3万9098円68銭で取引を終え、1989年12月29日につけた終値ベースでの史上最高値(3万8915円87銭)を約34年2カ月ぶりに更新した。今年3月に入り、4万円前後に水準を切り上げた後、いったん調整色を強めたものの、短期間で持ち直し、3月22日の取引時間中には一時4万1000円台をつけるなど、総じて堅調な推移が続いている。
史上最高値更新中の日経平均株価について、最近、次のような疑問がよく聞かれるようになった。具体的には、①日経平均株価がこれほど大きく上昇し、最高値を更新しているのはなぜか、②今回の株高はバブルではないのか、③株高にもかかわらず、景気が良いという実感がないのはなぜか、④日経平均株価は今後も上昇が続くのか──というものだ。本稿では、この四つの疑問に回答する。
好況実感より先に動く
まず、①の日経平均株価が足元で大きく上昇し、最高値を更新している理由から考えてみたい。これについては、「企業業績」が回復基調にある▽資本効率改善などの「企業改革」が進展している▽「賃金」引き上げの機運が高まっていた──という3点を海外投資家が非常に高く評価し、積極的に日本株を買い進めていることが主因と推測される。このほかにも、為替市場における円安傾向、半導体などハイテク株を中心とする米国株の堅調推移、中国の不動産問題を嫌気した中国株からの逃避マネーの流入など、追加的な好材料が複数重なり、日経平均株価は年明けから想定以上の速さで史上最高値を更新した。
次に、②今回の株高はバブルではないかという点については、株価を1株当たり予想利益で割って算出するPER(株価収益率)をみると分かりやすい。PERは株価が1株当たり予想利益の何倍まで買われているかを示すため、利益水準に対する株価の「割高」「割安」を判断する尺度として利用される。
1989年末時点の予想PERは、東証1部全銘柄で61.7倍だったが、今年3月25日時点の予想PERは東証プライム市場上場の全銘柄で17.09倍である。予想PERの妥当な水準は、過去の経験から14~16倍といわれているため、89年末の60倍超えはやはりバブルであり、今回は若干割高ながらも、バブルではないと判断される。
また、③日経平均株価が史上最高値を更新しているにもかかわらず、景気が良いという実感がないのは、一般に株価は景気循環に先んじて動く傾向があるためで、今は景気が上向いて好況を実感する前に株価が上昇している局面と考えられる。この先、企業業績の回復や企業改革の進展、賃金引き上げが実現していけば、企業の稼ぐ力が一段と向上し、それによって賃上げが継続、消費や投資が増加することで、やや時間を置いて次第に好景気を実感できるようになると思われる。
そして、④日経平均株価は今後も上昇が続くのかということに関しては、企業業績、企業改革、賃金の3点に改善傾向が確認されるか否かが焦点…
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週刊エコノミスト
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