現金が入手しづらい中国で“決済迷子”にならないためのお勧め4カ条 高口康太
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苦労して手にしたビザ(査証)で中国に入国すると、支払いの壁に直面。中国出張のつらい現状を報告しよう。
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「中国へようこそ! 携帯電話からカード、現金まで、中国ではさまざまな方法で簡単に支払いができます」
そう記すのは、中国人民銀行(中央銀行)が3月15日、ウェブサイトで公開した英文パンフレット「中国支払いサービスのガイド」。表紙にパンダのイラストをあしらい、中銀らしからぬフレンドリーな文言にしたのは、中国政府がそれだけ外国人客を待望していることの表れだろう。
中国政府は昨年、新型コロナウイルスの流行に伴う入国規制を撤廃し、独仏などの旅行者にビザの取得を免除する措置を導入したが、外国人入国者の回復ペースは鈍い。日本人を含む外国人が中国に出張や旅行するには煩雑な手続きを経てビザを取得しなければならない。入国できても現地の商店、飲食店、交通機関などで代金を支払おうとすると、困難に直面することが多い。中国出張がつらい状況は大きくは変わっていないのだ。
現金が使えないわけではない。1995年施行の中国人民銀行法は法定通貨の人民元による支払いを拒否してはならないと規定する。現実に現金の受け取りを拒む店は少なく、そうした目に遭った人が当局に通報すれば、店は処罰の対象となる。ただ、現金の釣りを用意していない店は多い。
そもそも最近の中国では現金の入手自体が難しい。筆者は昨年、上海市を訪れた際、日本のキャッシュカードやクレジットカードを使って現金自動受払機(ATM)で人民元を入手しようとしたが、ことごとく失敗した。海外発行のカードに対応するATMが大幅に減ったようなのだ。筆者の場合は最終的に人民銀行の支店に駆け込んでようやく入手できた。
アプリ普及率86%
中国人の多くは、スマートフォンにモバイル決済と呼ばれるQRコード決済アプリをインストールしてあらゆる支払いに使っている。日本で普及する「楽天ペイ」「PayPay」などと同じく、店やタクシー車内などに掲示されるQRコードを読み取って支払うサービスのことだ。人民銀行の23年末発表によると、モバイル決済の普及率は86%で、世界一だという。中国では情報技術大手のアリババ集団が運営する「支付宝(アリペイ)」と騰訊(テンセント)が運営する「微信支付」(ウィーチャットペイ)が2大アプリだ。
昨年まで「身分証(中国政府が中国に住む国民全員に発行する身分証明カード)」や中国の電話番号がない外国人は事実上、これらのアプリを使えなかった。アプリ運営会社は昨年の杭州アジア大会を前にして、外国の電話番号を登録し、外国発行のクレジットカードをひも付けられるようにした。しかし、運営会社はさほど積極的に宣伝しておらず、外国人に広く知られているとはいい難い。
ただ、アプリをインストールできても、身分証の番号がないと地下鉄の乗車券…
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週刊エコノミスト
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