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週刊エコノミスト Online チャットGPT

チャットGPTで経済統計と企業決算を可視化してみた 小野亮

使いこなせば、すごい武器に
使いこなせば、すごい武器に

 先行性の高い経済統計と企業業績を明記した決算短信を生成AI(人工知能)で分析してみると、驚きの結果が──。

AIが“現場報告”から因果関係を抽出

 経済統計の一つとして、内閣府は毎月「景気ウオッチャー調査」を発表している。家計や企業、雇用の動きなどを敏感に反映する現象を観察できる業種・職種に就いている一般の人々(景気ウオッチャー、全国に2050人)が下す景気判断を指数化したものが中心だ。

堺屋太一氏が考案した景気ウオッチャー調査

 生みの親は1998年7月に発足した小渕恵三内閣で、経済企画庁長官(当時)に就任した故堺屋太一氏である。堺屋氏は、「景気動向をもっと早期に把握できないか」という問題意識から、強いイニシアチブで景気ウオッチャー調査を誕生させた、といわれている。

 堺屋氏が追求した先行性の高さは、学術的に証明されてきている。最近では、内閣府・経済社会総合研究所が発行する学術誌『経済分析』(2023年10月)で、家富洋・立正大教授が既存の景気動向指標と比較しても「先行基礎指標として非常に有望である」ことを示した。

 図1は景気動向指数を構成する32の基礎系列と、景気ウオッチャー調査の三つの判断指数を対象に、筆者が分析の再現を試みたものである。

 横軸は「位相」と呼ばれるもので、指標間の相対的な先行・遅行関係を表している。垂直に引いた2本の破線は、位相の基準とする指標からみて前後1カ月相当のズレを表す。右側の破線よりも右に位置すれば、先行性は1カ月超ということだ。

 縦軸は、指標の強さを表しており、水平に引いた破線よりも上に位置する指標は、ノイズとはいえない「確かな」強さを持っていることになる。

 図1では、基礎系列のうち先行系列(●)と一致系列(▲)の多くが、垂直の破線の内側にある。これらの指標は1カ月という極めて短い先行・遅行関係にあり、グループとしてみれば、先行系列か一致系列かの大きな違いはない、ということだ。

 一方、景気ウオッチャー調査の指数(■)の位置をみると、二つの指数がプラス側の垂直破線の右側、かつ水平破線よりも高い位置にある。この2指標は「先行き(方向性)」と「現状(方向性)」に関する指標であり、従来の基礎系列よりも景気の先行きに対する高い先行性を持ち、強いシグナルを放っていることになる。

経済現象の因果関係

 景気ウオッチャー調査には、先行性という点に加えてもう一つ特徴がある。それは景気ウオッチャーが見聞きし、感じた経済活動の「現場の様子」を、テキスト情報として収集・公表している点だ。筆者は、チャットGPTを使って、今年2月の調査で公表されているテキスト情報を解析した。

 図2、80ページ図3は結果の一部をネットワーク・グラフとして表したもので、地域を表す茶色のノード(点)を中心にノードが伸びている。地域以外のノードは、チャットGPTがテキスト情報から抽出した因果関係(矢印付きのエッジ)で結ばれている。

 具体的な因果関係として、図2では「自動車」が原因となっているネットワークを抽出した。ノード内のテキストもチャットGPTが判断した、「何が」「どうなっている」という主語・述語の形式に切り取られている。

 さらにノード内のテキストには、チャットGPTが判定した「肯定的、否定的、中庸」のいずれかのラベルがついている。図2では、そのラベルに応じて色分け(肯定的〈紫〉、中庸〈緑〉、否定的〈青〉)した。

 こうして構築されたネットワークでは、青色のノードが多い。全国の自動車関連業界が総じて厳しい経営状況にさらされている、とチャットGPTが判断しているわけだ。実際もそうだろう。

 抽出された因果関係を詳しく確認するため、図2から北関東地域の部分を拡大したものが図3である。図3では、自動車業界を揺るがしている「大手の不正問題」が原因となって「顧客の購買意欲の逓減」を…

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