揺らぐ中国人の投資熱 高まる「過去の日本」への関心 久保和貴
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上海総合指数は年初から大幅に下落したが、2月初旬から反転している。上海に駐在する筆者が最新事情をお届けする。
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「株式市場が下落し、上海のショッピングモールは防護網を張った」
1月下旬、中国のSNS(交流サイト)で拡散した真偽不明の書き込みだ。「上海証券取引所の関連施設がテークアウトや宅配便など持ち込み物の安全検査を強化する内容の緊急通知をした」という投稿もあった。株安による不測の事態を想定しているのか。中国の個人投資家が中国株に悲観していることを反映していると見られる。
投資熱の低下は統計でもうかがえる。中国人民銀行(中央銀行)は3月22日、全国50都市の2万人を対象とする「2023年第4四半期都市預金者アンケート」の結果を公表した。それによれば、今後の資金使途で「投資」と答えた人の割合が09年の調査開始以来、最低水準だ。対照的に上昇したのが「貯蓄」。リスク回避に傾いているようだ。
ただ、中国人は最近、日本など海外株の上場投資信託(ETF)には関心を強めている。昨年面談した複数の中国機関投資家に日本株への関心を尋ねたところ、全員が「強い関心がある」と答えた。
中国人は過去の日本にも強い関心を寄せている。人口減少、バブル崩壊、デフレ突入、対米摩擦といった1990年代の日本が直面した問題は今の中国と共通するからだろう。面談でも、「90年代の日本ではどのような投資が有効だったか」という質問をよく受ける。中国人の投資好きは筋金入りだと痛感した。中国の景気が安定に向かえば、中国人は中国株買いを再開するのではないだろうか。
PERは12倍と低い
ロイターは昨年12月、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)について「創業者の任正非氏は常々、同社は決して上場企業にはならず、もっと大きな社会の理想実現に注力すると主張してきた」としつつ、「新規株式公開(IPO)が視野に入ってきてもおかしくない」とするコラムを配信した。同社のような未上場の巨大企業が上場すれば、中国株買いは動意づくかもしれない。
一方、海外投資家の中国株売買資金は昨年後半に大幅な流出超となったものの、今年1月以降は流入超に戻っている。背景には中国株の「値ごろ感」があると見られる。上海総合指数の株価収益率(PER、実績ベース)は3月末時点で約12倍と、長期平均の約16倍に比べかなり低い。海…
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週刊エコノミスト
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