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教養・歴史 絵本のチカラ

戦争孤児役で芸能界デビューした私 今は子を残して死ぬ親に思いはせ絵本を読む 高部知子

 私は幼い時から本が大好きだった。体が弱かった私に本は癒やしを与えてくれた。最も幼い頃の記憶で残っているのは『ぐりとぐら』(なかがわりえこ作/おおむらゆりこ絵)。双子の野ネズミが作る大きなカステラが食べたくて、祖母に泣いておねだりした。小学校の頃に好きだったのは『なまえのないねこ』(文/竹下文子、絵/町田尚子)。主人公の名前のない猫がかわいそうで、近所中の野良猫に名前をつけ、おこづかいで買ったミルクアイスを一緒に食べるのが楽しみだった。そのうち隣に住んでいるおじいさんが「エサなんかやるな! 保健所に電話するぞ!」と脅すので、水鉄砲を武器に塀の上によじ登り、保健所の人が来たら絶対に猫を守ると夜になっても身構えていたら母に怒られた。

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 私が母親になった時は2人の娘に毎晩、絵本を読んだ。娘たちのお気に入りは『スイミー』(レオ・レオニ作)。あまりに何度も読むので、すっかり内容は覚えている。そこで時々、オリジナルな話をでっちあげると、「違うよー! そこは〇〇だよ~」と口をとがらせて教えてくれる娘たちがいとおしくて仕方なかった。

 子育てが終わり50歳を過ぎた今も『なまえのないねこ』は一番好きな絵本だ。昔は猫を拾った少女にわが身を重ねたが、今は名前のない猫に自分の人生をダブらせる。「自分の名前を優しく呼んでくれる人がそばにいる」。そんなことが人生で何より大切な宝物であると、しみじみ感じる。

読み方が変わる

 最近は戦争というキーワードが気になり『ちいちゃんのかげおくり』(あまんきみこ作、上野紀子絵、あかね書房、1430円)という絵本を読んでみた。「かげおくり」とは、地面に映った自分の影を数分見つめた後に目を閉じ、空を見上げて目をあけると、今みていた自分の影が晴れた空に浮かんでくる、という残像を使った遊びをいう。ちいちゃんのお父さんは出兵する前日、家族全員でこの「かげおくり」遊びをする。

 遠い昔のことだが、私は『ガラスのうさぎ』(高木敏子作)というお話で芸能界デビューした。ちいちゃんと同じ戦争孤児のお話だった。戦争を知らない当時の私は台本に出てくる「奉天」「も…

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