米国で日本の小説が人気 翻訳者が増えAIツールも貢献 小林知代
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米国で日本の人気を感じられる分野の一つに小説がある。日本語による小説の英訳本が爆発的に売れているという。
ワシントンDCでは、ワシントン日米協会が主催する「ジャパンブッククラブ」が毎月開かれている。日本ファンの米国人がオンラインで十数人集まり、毎月異なる日本語の翻訳本を題材に、文学的な見解のみならず、日本社会の実情について熱心に語り合っている。筆者も時折参加しているが、米国人が日本に対してどのような思いを持っているのか知ることができ、いつも新たな気付きがある。
老舗のチャールズ・イー・タトル出版によれば、1960〜80年代に出版された日本の小説の人気が再燃しており、三島由紀夫や川端康成の古典が再出版されているという。現代小説といえば村上春樹だが、最近の翻訳本フィーバーを牽引(けんいん)するのは、吉本ばなな、川上未映子、村田沙耶香、小川洋子などの女流作家の作品である。
ひきこもりやシングルマザーの苦しみなど、現代社会に潜在するもどかしさや理不尽さを扱っており、読者の共感を呼んでいる。自国とは異なる日本の社会構造の中で描かれるストーリーは、共通の問題でも違うレンズで見ることができ、全く異次元の話のようではあるが、根本的には同じ問題である。読者は何とも不思議な体験を味わうことになり、それが日本文学の醍醐味となる。
「イヤミス」にも高い評価
日本の推理小説も根強い人気がある。日本では、読後に嫌な気分になる推理小説のことを「いやなミステリー」を短縮し「イヤミス」と呼ぶそうだが、米国でも、湊かなえの『告白』や『贖罪(しょくざい)』に代表されるこのジャンルは「Eww Mystery(気持ち悪…
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週刊エコノミスト
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