700年後に日本から子どもが消える? 親世代も減る負のスパイラル 吉田浩
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日本の子どもが1人になるまでの時間を示す「子ども人口時計」。過去10年で「その時」は1000年近く近づいた。
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現在の日本では少子化が急速に進行し、重大な問題となっていることはいうまでもない。総務省による2024年4月1日時点の日本の人口の推計値(概算)では、子ども(ここでは0~14歳)人口は1401万人であった。昨年4月(確定値)の1434.6万人と比較し、およそ33.6万人と大幅に減少した。
少子化問題は「いつかは本腰を入れて取り組まないと将来大変なことになる」ということは頭では理解されてはいるものの、抜本的対策なきまま、時間が経過してきた。そこで、筆者の所属する東北大学経済学研究科高齢経済社会研究センターでは、この問題を広く社会に意識してもらうべく、2012年から「子ども人口時計」を試作し、公表してきた。
この時計は、毎年4月1日時点の子ども数と過去1年間の減少率をもとに、その減少率が続くという仮定を置き、リアルタイムで子ども数の減少を表示しているものだ。
「現在の瞬間推定子どもの数」として、デジタル時計が1秒進む間に、推定人数が減少する様子を見ることができる。また思考実験として、このままの減少ペースが続いた場合の、1人になるまでの残された時間として「日、時間、分、秒」もリアルタイムで動かしており、「予定日」が刻々と迫ることが分かる。
前回より102年前倒し
この「子ども人口時計」は私たちが少子化問題の解決を先送りにしている影響を「残された時間という形で見える化」している。
そして今年度の「2024年版子ども人口時計」が推計され、4月22日に公表された。この1年間の子どもの減少率は年率マイナス2.24%で、去年のマイナス2.02%よりも悪化した。子どもの数が1人となると機械的に計算される時点は、「西暦2720年1月5日」となった。これは昨年の推計結果「2821年10月27日」から、102年の前倒しで、危機が増加したことが分かる。
ちなみに今年の「こどもの日」の推定子ども数は、先の減少率により、約1398万人にまで減少。また、公表日時点では、“子どもが1人になる日”は、日換算で「25万4100日後」と推定された。
この「子ども人口時計」の経過をみると、図1のとおり、推計の度に、徐々に子どもが1人となる予想年数が現在に近づいていると分かる。スタートした12年当初は、「西暦4147年」と推計され、2135年後だった。それが22年には「西暦2966年」と、10年間で一気に1000年以上も前倒しとなった。そして今年は2720年と、わずか2年で246年も近づいている。
子どもの減少が毎年進んでいるのは、子どもの減少率が一定ではなく、毎年加速しているからだ。前年に比した子ども数の変化率はかつてではマイナス1%に至らなかったが、最近ではマイナス2%を超え、ますます減少率が大きくなっている(図2)。
出生数=「婚姻したカップル数」×「一つのカップルから生まれる子ども数」で表されるとすると、昨今の晩婚化、非婚化は子どもをもうけるカップル数の減少に直結する。一般に親世代の男女2人から2人の子どもが生まれて人口水準は維持できる。しかし、22年の合計特殊出生率が1.26であったということは、親世代2人から2人未満の子どもしか生まれないことを意味する。
実は、日本は既に1975年には合計特殊出生率が2を下回り、その時点で人口の縮小再生産過程の導火線には火が付いていたといえる。その後、長寿化が進んだため、総人口は緩やかに増加し、89年の…
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週刊エコノミスト
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