私のがん治療収支を計算してみた――寛解後の検査通院費もお忘れなく 吉田啓志
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約半年間にわたって下咽頭がんを治療した筆者が、入院・通院などに費やした医療費や民間保険の収支を総括した。
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筆者は2022年5月、喉の奥の下(か)咽頭(いんとう)にがんが見つかった。当時59歳。同6月から治療を始め、同11月に腫瘍が消えた「寛解(かんかい)」と診断された。この間の入院は計3回(通算45日間)で、通院は29回だった(すべて公的健康保険が利く標準治療)。医療費の自己負担はどの程度だったか収支を振り返ってみた。
下咽頭がんは5年生存率が低く、切除する例が多い。筆者の場合はリンパ節2カ所に転移し、ステージは7段階の重い方から3番目の「4A」だった。それでも手術すれば声を失うという。早期発見のおかげで原発(元々の腫瘍)部分は2センチ弱と小さく、主治医は「抗がん剤+放射線治療」を選んだ。
寛解までに要した総医療費(10割分)は約300万円(入院約180万円、外来約120万円)。主なものは放射線治療約120万円(計35回)、入院費約100万円、検査・画像診断費約40万円などだ。このうち窓口での自己負担は約65万円だった。別途、入院食に約4万2000円かかった。
高額のようだが、公的健康保険の「高額療養費制度」に基づき、月々の自己負担には上限がある。外来の自己負担分(筆者の場合は3割)はいったん払っても、上限を超えた分は2カ月ほど後に戻ってくる。入院でかかった分は最初から限度額までの支払いで済む。
高額療養費の上限月額は、収入や70歳以上か否かで異なる。70歳未満の場合、「3万5400円」から「25万2600円+(10割分の総医療費-84万2000円)×1%」までの5段階がある。治療時点での筆者の月々の上限額は「16万7400円+(10割分の総医療費-55万8000円)×1%」=約17万円だった。
1回目の入院(6月29日~7月8日)は月をまたいだ。月別に自己負担を見ると、6月(29、30日)は約5万2000円(入院費約2万5000円、放射線約2万2000円など)。7月(1~8日)は約13万円(入院費約8万6000円、放射線約3万8000円など)だった。高額療養費は月ごとの合算なので6、7月とも約17万円の上限に届かず、8日の退院時には両月分を合わせた約18万2000円を請求された。
片や2回目の入院(7月20~29日)の3割負…
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週刊エコノミスト
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