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医薬製造から創薬支援まで請け負うCDMO 目立つ日本企業の大型投資 和島英樹

横浜市内へのCDMO施設整備を発表したAGCの平井良典社長(左)と横浜市の山中竹春市長。約250億円を投じる計画だ(2023年12月)
横浜市内へのCDMO施設整備を発表したAGCの平井良典社長(左)と横浜市の山中竹春市長。約250億円を投じる計画だ(2023年12月)

 製薬会社から薬の開発や製造を受託する「CDMO」が急拡大している。従来型薬の製造のみならず、創薬支援の役割なども期待されている。

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 製薬メーカーが、薬の製造を外部に委託する動きが強まっている。製造に伴うリスクやコストを低減させ、新薬開発に集中できることがその要因だ。開発支援も含めて製造を請け負う企業はCDMO(Contract Development and Manufacturing Organization=医薬品開発製造受託機関)と呼ばれる。再生医療などの製品や抗体医薬など、医薬品の製造工程の開発から、臨床試験薬、商業生産までを一貫して受託する。

市場規模は年8%成長

 製薬企業やバイオベンチャーなどは、新薬の研究開発に経営資源を集中させるため、医薬品の製造をCMO(医薬品製造受託機関)に委託するケースが世界的にも増加している。特に風邪薬などの一般的な薬に多い、化学合成が可能な低分子薬はCMOに製造を委ねる例が増えている。人に備わっている「抗体」を利用した抗体医薬でも製造手法が確立しているとCMOが活用される場合もある。

 一方で、近年開発が進んでいる再生医療や、遺伝子治療などは製造手法が確立されていないことが多い。製薬企業などと製造手法を考え、製造工程を開発(Development)するところから委託され、連携して進むのがCDMOだ。CDMOの中には細胞培養や新規の抗体医薬について独自の技術を持つところが少なくない。

 製薬企業などと一緒に製造工程を開発すれば、低コストで高品質なものができる可能性が高まる。開発期間の短縮にも貢献することになる。バイオの技術を使ったCDMOはバイオCDMOとも呼ばれる。大手調査機関のまとめによれば医薬品原薬CDMOの市場規模は2020〜28年に平均年8.0%成長となり、28年の市場規模は450億ドル(6兆7500億円)程度になる見通し。一般的な医薬品の成長率7.1%を上回る伸びが見込まれるとしている。

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 CDMO市場で日本企業の大型投資が目立っている。富士フイルムホールディングス(HD)傘下の富士フイルムは今年4月、バイオCDMO中核企業の北米拠点に約1800億円の大規模投資を行うと発表した。ノースカロライナ州に建設している新拠点(25年稼働予定)に新たな設備投資を実施し、抗体医薬品の原薬製造設備を大幅に増強させるという。増強設備の稼働は28年を予定している。

 増強設備が完成すれば、北米でのバイオCDMO拠点として最大級の原薬生産能力になる。同社はM&Aも活用して事業を拡大してきており、CDMOとして製造能力で世界最大手級となっているとみられる。発表資料によれば、抗体医薬品市場は抗体薬物複合体(ADC)やバイスペシフィック抗体を用いた次世代型の需要拡大も加わり、年率8%で成長することが見込まれているとしている。

 ADCは抗体に薬物を結合させたバイオ医薬品で、第一三共ががん治療薬「エンハーツ」として開発したことが知られている。治療効果が高く、適応拡大で売り上げを伸ばしている次世代の抗体医薬品だ。また、バイスペシフィック抗体は2種類の抗原と結合できる技術で、従来の抗体医薬品は1種類の抗原としか結合できないが、2種類の抗原と結合してターゲットになる組織や細胞を狙い、強力…

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