名門地方高――人材輩出力の5校 鈴木隆祐
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高校の校風は勉強の指導方法だけでなく、部活動や伝統がかもし出すものだろう。逸材を輩出し続ける地方の名門高校を探った。
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人は同じ高校に通ったというだけで、どこか共通した感覚を持つ。筆者がこれまで取材し、目を見張る人材輩出力を認める5校を紹介しよう。
■宮城県仙台第一高校(仙台市)
1892(明治25)年に創立し、2009年度まで長く男子校だった。校訓に「自重献身」、標語に「自発能動」を掲げ、自主性を尊重する校風が特徴だ。
著名な卒業生には、大正デモクラシーの理論的指導者として知られる政治学者、吉野作造(生年=1878年)▽俳優の菅原文太(1933年)▽作家の井上ひさし(34年)▽映画監督の岩井俊二(63年)▽天文学者の小久保英一郎(68年)▽数学者の加藤文元(同)▽プロレスラーの田口隆祐(79年)▽東北放送アナウンサーの佐藤朱(96年)──とそれぞれの道で独自の流儀を通す人が多い印象だ。
佐藤は高3だった14年、アイドルグループ「AKB48」のオーディションに受かった。芸能活動を始めた後、テニス選手として県高校総合体育大会に出場するため、AKB48のイベントを欠席したことが驚きをもって報道された。一高生らしい気骨ある姿勢といえるだろう。
■埼玉県立浦和高校(さいたま市)
1895(明治28)年の創立以来、男子校を貫く。埼玉県は栃木・群馬両県と並び、一部の歴史ある県立高が男女別学のまま。だが、埼玉県の第三者機関「男女共同参画苦情処理委員」が昨年8月、県教育委員会に「共学化が早期に実現されるべき」と勧告したことを機に、浦高の共学化を巡る議論が高まっている。
これに対して浦高同窓会は同12月、共学化に反対する趣旨の意見書を知事と教育委員長に出した。卒業生で作家の佐藤優(1960年)も同様の姿勢を表明している。
卒業生の多摩美術大学教授(広告論)、佐藤達郎(59年)は「在学中、バンドを組み、フォークやポップスの曲を演奏して青春を謳歌(おうか)した」としつつ、「感情でなく、論理で考えると『共学化すべき』となる。公立校である以上、浦高は時代の趨勢(すうせい)に合わせるべきだ」と共学化やむなしの立場だ。
他の卒業生には、スーパーマーケットのヤオコー会長、川野幸夫(42年)▽TOPPANホールディングス(HD)会長の金子真吾(50年)▽三井住友フィナンシャルグループ会長の国部毅(54年)▽クラレ社長の川原仁(62年)▽三菱UFJ銀行頭取の半沢淳一(65年)──と大物財界人が多い。
一方、歌手のタケカワユキヒデ(52年)、宇宙飛行士の若田光一(63年)、テレビ朝日アナウンサーの山口豊(67年)などの異才も送り出す。佐藤も広告大手アサツーディ・ケイ(現ADKHD)のコピーライターからクリエイティブ戦略本部長などを経て、11年に大学教授に転じた。博覧強記の学究肌が多いのは、同高の持ち味か。
■静岡県立静岡高校(静岡市)
1878(明治11)年開校の歴史の長い名門校だ。野球部が強く、甲子園に出場した回数は静岡県勢として最多の春夏合わせて43回を誇り、旧制静岡中学校時代の1926(大正15)年には優勝。文字通りの文武両道校といえる。近鉄の元投手、赤堀元之(70年)や、日本ハムやオリックスの元投手、増井浩俊(84年)など、プロ野球で活躍した卒業生も多い。
財界では地元物流大手の鈴与会長、鈴木与平(41年)▽博報堂DYHD会長の戸田裕一(48年)▽アステラス製薬元会長の畑中好彦(57年)▽鈴与社長の鈴木健一郎(75年)──が卒業生だ。
クリエーティブな分…
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週刊エコノミスト
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