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学びの狙いが「非認知スキル」にシフト 井上修

 教育現場が劇的に変化している。「やり遂げる」「深く考える」「仲間と協調する」などの“人間力”を養う私学が人気だ。理系優位は継続し、美術系人材は引く手あまた。インターナショナル校との連携など国際化も加速。受験市場はいやが応でも影響を受けている。

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 首都圏は、中学受験が人気だ。2024年中学受験者数は6万5600人で、23年より900人の減少にとどまった。受験率は、中学受験者数の減少幅が、小学校卒業生数の減少幅より少なかったため上昇、22.7%と、23年の22.6%を上回り過去最高となった(図1、2)。また今回の受験生微減の要因は、公立中高一貫校の不人気で、私立だけなら昨年同様の人気だった。

 なぜ、私立中高一貫校(以下私学)は人気なのか。単に大学合格実績がいいから人気という時代は終わっている。近年の私学の人気を表すキーワードは「柔軟性」である。

 20~23年のコロナ禍において、私学は「柔軟性」を発揮した。20年春の全国一斉休校時にも、迅速にICT(情報通信技術)環境を整備して、生徒たちの学びを止めず、公立との差を世に知らしめた。さらにコロナ前後から始まっている社会の変化、大学、大学入試の変化、そして世界の変化にも柔軟に対応している。

社会人の父母が影響

 中学受験を志す家庭は、その学費を用意できる世帯年収の必要性もあり、多くは共働きだ。かつて父親の収入を母親がパートで補うケースもあったが、近年は両親の収入が「メインエンジン」になる。

 そのため社会の変化が両親を通し家庭に入る。父親のみが社会との接点という時代ではない。両親とも社会、会社や所属組織の変化を痛感している。

 それは「上意下達型組織」から「グループワーク」「プロジェクト型」の働き方への変化だ。上長指示で受動的に働くのではなく、チームの中で助け合い、業務を遂行するよう組織は変化した。

 こうした組織で大事なのは「人の話を聞く」「やり遂げる」「深く考える」「仲間と協調する」などだ。この能力は、教科教育などの「認知スキル」でなく、「非認知スキル」で、近年重視されている。私学では教科教育以外に、クラブや学校行事などで非認知スキルを培ってきた。近年、保護者も非認知スキルの大事さを社会で実感、学習だけではなくクラブや学校行事も充実した「バランス型私学」を選ぶ傾向が強まった。

理系優位の流れ

 私学では「カリキュラムの前倒し」が終息を迎えている。かつては「中高6年間を高2までに終了、残りの1年間は予備校的に学ぶ」が主流だったが、この先取りの弊害が顕在化した。大事なのは高3卒業段階で学力が身につくこと。無理…

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