教員の長時間労働と待遇改善の方策 北條雅一
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文部科学省の調査で、教員の長時間労働は依然として続いていることが明らかになった。報酬引き上げも検討されているが、一時しのぎでは真の解決にはならない。
子どもの教育環境を良くするために
文部科学省は4月、「教員勤務実態調査」の最新の調査結果(2022年度)の確定値を公表した。
調査結果によると、前回調査(16年度)と比較して、校長や教頭、教諭といったすべての職種において在校等時間は減少している。例えば小学校教諭の場合、平日の在校等時間の平均で約30分減少し、1日当たり10時間45分。中学校教諭も同様に30分程度減少し、平日1日当たりの平均在校等時間は約11時間となっている。
「在校等時間」という言葉は聞き慣れない読者も多いかもしれない。在校等時間は、教員が校内に在校している時間と校外での勤務時間を合計し、そこから休憩時間や業務外の時間を差し引いて求められる。校外での勤務時間には、研修、校外学習や修学旅行の引率、部活動の大会や練習試合の引率などが含まれる。他方、自発的に行う自己研さんの時間は業務外の時間とされる。要するに、在校等時間とは「学校の内外を問わず先生が業務に携わっている時間」と考えて差し支えない。
多くの教員が過労死ライン
こうして求められる在校等時間が、この6年の間に1日およそ30分減少した、というのが今回の調査結果である。教員の働き方改革が着実に進展している、と評価できるかもしれないが、先に紹介したように、それでも平均で1日3時間以上の「超過勤務」が発生している(教育公務員の正規の勤務時間は1日7時間45分)。つまり今回の調査結果は、改善しつつあるが依然として教員の長時間労働は解消には至っていない、と解釈すべきであろう。
調査結果で公表されている週当たり在校等時間の分布を見てみよう(図)。週40時間未満、いわゆる定時で勤務を終えている教員は全体の3%にも満たない。週45時間未満、つまり1日1時間程度の超過勤務の者を含めても1割程度に過ぎない。大半の教員は週45時間から60時間の勤務をしているが、中学校では60時間以上の勤務をしている教員も決して少なくはなく、全体の36%程度を占めている。
週60時間という勤務時間は、正規の勤務時間を週40時間とすれば、週20時間の超過勤務に相当する。1カ月に換算すると20時間×4週=80時間。これは厚生労働省が定める過労死ラインと同じである。つまり同調査の結果は、過労死ラインを超える勤務時間となっている教員が依然として多く存在することを示している。
一般の会社員や公務員であれば、残業や休日出勤といった時間外労働に対しては、法律で定められた割増率で算出した時間外手当(超過勤務手当)が支払われる。しかし、前述のような長時間労働にもかかわらず、教育公務員である公立学校教員には時間外手当は支払われない。驚かれる読者も多いかもしれないが、公立学校の教員は何時間働いても時間外手当が支給されないのである。
時間外手当が支給されない代わりに、教員給与には全教員一律で教職調整額というものが支給されている。これは給料月額の4%を基準として、各都道府県が定める割合を支給するというものだ。つまり、全教員一律で教職調整額が支払われているのだから、個々人の時間外勤務に対して別途の手当ては支給しない、という特殊な仕組みになっているのである。
このような仕組みは今に始まったものではなく、現行の仕組みを定めた「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)が制定されたのは、今から50年以上も前の1971年である。
教…
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週刊エコノミスト
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