個人増加とデジタル化で様変わりする株主総会 丸谷国央
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新NISAにデジタル化も相まって、増加する個人株主への対応は企業にとって高い関心テーマだ。株主総会もその姿を大きく変貌させている。
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株主総会はコロナ禍を経て、新たな局面を迎えている。
東京証券取引所(東証)と金融庁が2015年に定めた上場企業の行動指針「コーポレートガバナンス・コード(CGコード)」に代表される企業統治改革により、企業は機関投資家などの投資家と面談や説明会を通じて“建設的な対話”に取り組むようになった。また、東証の市場再編による流通株式比率の向上や、投資単位の引き下げのために株式分割を実施する企業の増加、新NISA(少額投資非課税制度)開始などにより近年、個人株主数は増加が続く(図1)。
昨今は企業間の株式の持ち合い(政策保有株式)に対して投資家の厳しい目が向けられる。多くの企業は政策保有株式の縮減に努めており、その売却の受け皿として個人株主の増加に視線が注がれる。企業にとっては“機関投資家対応”に加え、“個人株主対応”が関心の高いテーマとなっている。
新型コロナウイルス感染症が感染症法上の5類に移行した直後の23年6月総会においては、コロナ禍前の水準には及ばないものの、来場株主数は増加し、株主総会に活気が戻った。6月総会の後も来場株主数や発言件数の平均値は前年比増で推移しており、24年6月総会は、昨年以上の活況が見込まれる。
株主総会は、年に1度、経営陣が株主と直接向き合う場だ。企業は、来場株主(多くは個人株主)の信認を得るべく、対話の深化に工夫を凝らす。コロナ禍では感染症対策として来場自粛を求める代わりに自社ウェブサイトなどを通じ、事前に広く株主から質問を受け付ける事前質問の活用が進んだ。コロナ禍後も対話促進策として採用する会社が増え、23年6月総会では全体の約12%(2343社中290社、当社調べ)が実施した。総会に出席できない株主や、大会場で挙手をして発言することに抵抗がある株主にとってはコミュニケーションの手段が増える。企業側にとっても株主の関心の高い質問をあらかじめ把握し、事前に回答を準備できるメリットがある。
議決権行使で電子ギフト
来場株主に対して土産品を配布する会社はコロナ禍以降大幅に減少し、直近の24年3月総会における当社委託先での実施率は12.4%(前年比0.8ポイント増)にとどまる。一方で、総会後に懇親会や事業説明会といったイベントを開催したり、個人株主の議決権行使の促進策として、インターネットによる事前の議決権行使をした株主に抽選で電子ギフトなどのインセンティブを付与したりするなど、各社各様の工夫もみられる。
総会での株主の発言は多岐にわたるが、経営方針・経営戦略に関する質問が多数を占める。また、時流に即した質問もある。例えば、プライム市場上場企業について30年までに女性役員の比率を…
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週刊エコノミスト
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